【写真1】オンライン会話の実験の様子(筆者提供)
【写真1】オンライン会話の実験の様子(筆者提供)
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 コロナ禍をきっかけに、「脳トレ」でも著名な川島隆太先生率いる東北大学加齢医学研究所では毎週月曜日の全体ミーティングが対面からオンラインに切り替わりました。「オンラインでは何かが足りない」――。同研究所の榊浩平助教は、オンライン会議では「機能的」には成立してもコミュニケーションの「質」が異なるように感じたといいます。もしかすると脳活動にも違いがあるのでは? 脳活動を調べていくと、待っていたのは驚くべき結果でした。(2023年2月13日刊行予定『スマホはどこまで脳を壊すか』から一部抜粋・再編集)

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■オンラインで会話をしても脳と脳はつながらない

 コロナ禍の影響で私たちのコミュニケーションの形式は大きく変化しました。オンライン・コミュニケーションの機会が多くなり、みなさんはどのように感じているでしょう。対面でのコミュニケーションが普通だった「旧・ノーマル」時代と比べて、人と人との物理的な距離は明らかに広がりました。物理的な距離の広がりと比例するように、心の距離まで離れつつあるような感覚を持ってはいませんか?

 大学にいると、「オンライン授業が増えて家から出なくなった」「部活やサークルの活動が制限されてなかなか友達ができない」「飲み会もできないからつまらない」などの学生たちの声が聞こえてきます。みなさんが漠然と感じている、寂しさ、物足りなさのようなものは、どうやら正しいもののようです。むしろ事態はもっと深刻なものかもしれません。

 もったいぶらずに、先に結論から述べます。私たちが行なった緊急実験の結果、オンライン・コミュニケーションでは、「心と心がつながらない」「コミュニケーションになっていない」「ひとりでボーッとしている状態と変わらない」という衝撃的な事実が明らかとなったのです。

 脳の活動は上がったり下がったり、時々刻々と変化しています。そのような脳活動の時間的なゆらぎが、会話をしている人たちの間で揃ってくるということが、最近の研究でわかってきました。私たちは、複数の人たちの間で脳活動のリズムが揃ってくるという現象が、コミュニケーションにおける共感や共鳴のような現象を反映しているのではないかと考えています。話している相手と脳活動のリズムが揃っているとき、私たちは「つながっている」と感じるのかもしれません。

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オンライン会話は、脳にとっては正常なコミュニケーションになっていない