術前化学療法で特に薬の効きがよいタイプは、「HER2陽性」と、ホルモン受容体とHER2が共に陰性の「トリプルネガティブ」で、早期であれば術前の化学療法だけでがんが消失することもある。使うのは従来型の抗がん薬だが、HER2陽性なら分子標的薬のトラスツズマブやペルツズマブを、トリプルネガティブなら免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブを併用する。
術前化学療法の効果によっては、術後化学療法を変更または追加する。それによって、再発予防効果がさらに高くなることがわかっている。HER2陽性では抗体薬物複合体のトラスツズマブ エムタンシンが、トリプルネガティブでは従来の内服抗がん薬のカペシタビンが用いられる。
術後化学療法の効果予測検査として、承認が待たれるのは、「オンコタイプDX」だ。術後化学療法の目的は再発リスクを下げることだが、治療対象については判断が難しいケースもある。オンコタイプDXを受けることで、術後化学療法の効果を予測することができ、必要な患者にだけ抗がん薬を投与することができる(2023年1月時点では未承認)。
また、「ホルモン陽性」の乳がんでは、術後の再発予防を目的にホルモン薬を用いる。
「再発リスクの高い場合は、ホルモン薬に分子標的薬のCDK4/6阻害薬(アベマシクリブ)を併用することが推奨されています。ホルモン薬と一緒に2年間服用することで再発予防効果が高く、2021年術後薬物療法として承認されました」
と永井医師。また、BRCA1/2に変異がある場合は、PARP阻害薬のオラパリブを1年間にわたって服用することで生存期間が長くなることがわかったことから、22年、再発リスクの高い早期乳がんの術後治療でも承認され、それに続き、内服の抗がん薬のS‐1も術後のホルモン薬との併用が承認された。
転移があるステージIV、あるいは再発がんの薬物療法も、サブタイプ分類で変わってくる。