世界銀行の主任エコノミストも務め、日本などの先進国中間層の成長率の鈍化を見破り、的確に分析したブランコ・ミラノビッチ氏。冷戦後、資本主義だけ残った世界で広がり続ける不平等を、彼はどのように分析するのか。そして、私たちの夢でもあった「グローバル化」の行く末とは? 最新刊『2035年の世界地図』で語った資本主義の未来予想図を、本書から一部を抜粋・再編して大公開します。
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■「不平等」を促進する2020年代の3つの危機
――2020年初頭以来、新型コロナウイルスのパンデミックは、世界を根底から揺るがし、世界のほとんどの国の経済に打撃を与えてきました。さらに、2022年2月にはロシアがウクライナへの侵攻を開始し、世界中で深刻なエネルギー価格の高騰が起こっています。この困難な時代について、あなたのお考えをお聞かせください。
私は、グローバルな不平等を研究しています。これは明らかに大きなテーマであり、現在の動向に大きな影響を受けています。問題は、現在の諸々の事態がまだまだ進行中である、ということです。
まずは、2020~2022年の間に起きた危機を3つに分けてみましょう。1つ目は、コロナ禍です。経済にとっても、病気にかかった人や亡くなった人にとっても、大きな危機であり、まだまだ続きそうです。
2つ目の危機は、米国と中国との間で、より深刻な貿易摩擦や競争が始まったことです。この競争は現在、政治の場でも深まっています。
そして、3つ目の大きな危機は、戦争です。つまり、ロシアのウクライナへの侵略です。このショックもまだまだ続きそうです。残念ながら、私たちは本当に、これらのとてつもないショックを抱えています。2019年に人々に尋ねたとして、3つとも予測できた人は誰もいなかった、と思います。
そこで、グローバルな不平等への影響に目を向けると、そこでも非常に着目すべき結果が出ています。