1924年創業の「支那料理ハマムラ」。ここが、京都で初めての中華料理店だとされる。料理長を務めた広東省出身の高華吉(こう・かきち)氏は、当時脂っこいと不評だった中華料理を、にんにくや香辛料を控え、だしを効かせることで京都人好みの味にアレンジ。あっさりとやさしい味わいの中華は、またたく間に花街に浸透することとなった。戦後に独立した高氏は次々と名店を手掛け、数多くの弟子たちが今もその味を受け継いでいる。
「毎日でも食べることができる中華料理」として、京都の人々に親しまれる“京都中華”は、広東料理ベースの「鳳舞系」に対し、北京料理ベースの「盛京系」という二大系譜が存在ある。2月7日に発売されたばかりの『東京・大阪 名店の味が再現できる! ひみつの町中華レシピ』から、高氏の系譜に連なる「鳳舞系」3店と、はるまきやカラシソバなど京都中華の名物を紹介したい。
広東御料理 竹香(たけか)の「はるまき」
祇園の一等地という場所柄、舞妓さんや芸妓さんが訪れることも多い「広東御料理 竹香」。にんにくや香辛料など匂いの強いものや脂を控えた、やさしい味わいの料理が中心の名店だ。なかでも、1966年の創業以来、変わらず愛される「はるまき」は、来店客の9割が注文する名物。一口サイズにカットし、食べやすさにも配慮している。初代のこだわりが詰まった料理は今も花街の人々を魅了している。
鳳舞楼(ほうまいろう)の「カラシソバ」
2009年に惜しまれつつ閉店した『鳳舞』。京都中華の祖とされる、高氏自身が手掛けた店だ。鳳舞楼は、直系の弟子の一人が2015年に開店。味と技を受け継いだ鳳舞の名物カラシソバは、京都中華を代表するメニューとして全国から注目を集めている。
カラシソバとは、酢で溶いたからしを絡めた餡かけ麺。鳳舞系で唯一となる鳳舞楼の自家製麺は、当時、麺作りを担当していた鳳舞楼の店主が研究を重ね、2種の小麦粉をブレンドしたもの。オリーブオイルを加えた食感もよく、鶏ガラ・昆布スープの旨味あふれる餡との絡みも抜群だ。伝統を守りながらも日々進化を続ける逸品をぜひ味わってほしい。