SNSを介すれば、多くの人とつながることができる現代。いろんな人と知り合って人脈を広げることに意欲を燃やしている人も多いのではないでしょうか。いっぽうで、人とのつながりが少ないことで、逆に劣等感を感じている人もいるかもしれません。
ミリオンセラー『人は話し方が9割』の著者・永松茂久さんの『君は誰と生きるか』は、そんな現代の風潮に一石を投じる一冊です。永松さんはまえがきで、この本の目的は「世間一般に流れている人脈神話からあなたを解き放つこと」(同書より)と明らかにしています。
実は永松さん自身、以前は人生を変えてくれるような出会いを求めてさまよい続けていたといいます。けれど、ある人物との出会いにより、そんな考えが一変する経験をすることとなりました。
今から17年前の2005年、人生の師と呼べる人物のもとに学びに行っていた永松さん。その人にふと「君は人と出会うことが何よりも好きだって言ってたよね。今もそうやっていろんな人のところに会いに行ってるの?」と聞かれます。「はい。行ってます。多くの人から『人生は出会いで変わる』と教えられてきたので」と自信を持って答えた永松さんでしたが、相手の反応はイマイチで、「お金と時間がもったいないな」との言葉を返されたのです。日本の納税王でもあるその人は、「人って、特に成功者と呼ばれる人って、ただ出会って名刺交換をしたくらいでは力を貸してはくれないんだよ。その人がどんな在り方で生きているか、今現在、どんな努力をしているか、をしっかりと見抜くものだ」(同書より)と言い、「まずは自力を出すこと。その自力の上に他力が乗るんだよ」と説きます。それは、数々の成功者のもとを訪ね歩くことに病みつきになり、「人脈は広ければ広いほどいい」と信じていた永松さんの価値観を覆すのにじゅうぶんなものでした。
同書は、その後も永松さんが"師匠"と仰ぐこの人物との対話を通して体得した人間関係論があますところなく記されています。
同書を通じて繰り返し説かれるのは、「人生は思いのほか短く、時間は有限である。その中で、自分は誰と生きるのか?」ということです。永松さんと師匠による師弟問答のようなやりとりを読みながら、皆さんも自分のこととしてこのテーマを受け止め、考えることになるでしょう。
それにしても、この「師匠」とは誰なのか、気になる人もいるかもしれません。日本の高額納税者であり実業家、そしてビジネス書のベストセラー作家として有名な人物......。その名前は同書のあとがきで記されています。永松さんは、「あまりにもその存在が大きく、またたくさんの人に知られているので、先入観なしで読んでいただけるよう、あえてあとがきでその存在を紹介したことをご理解いただきたい」(同書より)としています。ぜひまずはフラットな気持ちで同書を読み、人間関係における極意に耳を傾けてみることをおすすめします。永松さんのようにその考えに感銘を受けた人にとっては、同書は腑に落ちるまで何度も読み返したくなる大切な一冊になるに違いありません。
[文・鷺ノ宮やよい]