【乳がんの放射線治療】患者数が多い全国トップ15病院　近年は効果と安全性を担保し「短期間照射」が標準化

がんの3大療法の一つである放射線治療は、ここ20年ほどの間に急速な進歩を遂げ、根治のための有力な治療手段に位置づけられるようになった。週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2023』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数・治療数の多い病院をランキングにして掲載している。ここでは、「乳がんの放射線治療」の解説記事とともに、乳がんに対する放射線治療患者数が多い病院を紹介する。

【ランキング】乳がん放射線治療新規患者数が多いトップ20！1位は聖路加国際病院、2位は神奈川の病院

＊　　＊　　＊

　乳がんの根治を目的にした治療は手術が中心だが、放射線治療は「術後の再発予防」で重要な役割を果たしている。広島大学病院の永田靖医師はこう話す。

「手術でがんを切除したつもりでも、目に見えないわずかな病変が残っている可能性があります。残っているがん細胞を放射線でたたいておくことで、再発を減らすことができます」

　術後照射が必要になるケースは二つある。その一つが、「乳房温存療法」だ。かつての乳がん治療では病巣の大小を問わず乳房ごと切除していたが、再発させることなく乳房を残すために乳房温存療法がおこなわれるようになった。永田医師は言う。

「乳房温存療法は、がんとその周囲だけを切除する『乳房温存術（部分切除）』と、温存乳房全体への術後照射をセットでおこないます。術後に照射を加えると乳房内再発を約3分の1に減らすことができる。生存率は全摘した場合とほとんど変わらないことがわかっています」

■1回の照射線量を増やし回数を減らして負担を軽減

　乳房温存療法の照射は通常25回。5週間の通院が必要で、患者の負担が大きかった。しかし近年は効果と安全性を担保しながら1回にかける線量を増やし、16回で約3週間に縮める「寡分割照射（短期間照射）」が標準化されつつあるという。

　術後照射が必要になるもう一つのパターンは、がんが局所で進行していてわきの下のリンパ節に4個以上の転移があるなど、再発リスクが高い場合。胸壁や周囲のリンパ節からの再発を防ぐため、全摘術後に放射線を照射する。