新型コロナウイルスの流行が日本経済に深刻な影を落とし始めた。影響は製造業などにも広がり、政権が誇る「戦後最長の景気拡大」は風前の灯だ。AERA2020年3月2日号から。
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日本の製造業のサプライチェーンへの影響も深刻だ。日産自動車は中国からの部品の調達が困難になったとして、福岡県の完成車工場の生産ラインを14日以降、停止させている。任天堂も中国でつくっているゲーム専用機「ニンテンドースイッチ」の出荷が遅れ、商品が品薄状態になる見通しだ。
業績予想の修正を迫られる上場企業は相次ぎ、日銀の黒田東彦総裁も国会で、SARSが流行した03年に比べて「影響が大きくなる可能性」に言及した。
感染が日増しに拡大する日本国内では、予防のために人の動きそのものにまでブレーキがかかってきた。
3月に予定されている東京マラソンでは、一般参加者枠を全面的に取りやめることになった。23日の天皇誕生日の一般参賀など、各地で多くの人が集まるイベントが中止になっている。
こうした流れは今後、さらに加速するかもしれない。
厚生労働省は飛沫感染が起きる主な場所として、「劇場や満員電車などの人が多く集まる場所」を挙げる。企業では通勤時の満員電車を避ける目的で、NTTグループやソフトバンク、双日、武田薬品工業など、次々とテレワークや時差出勤を導入し始めた。
フリマアプリ大手のメルカリは19日から、東京では原則在宅勤務とした。楽天も19日からグループ会社も含めて約1万8千人の従業員を対象に、在宅勤務ができるようにした。楽天の担当者は「リモートワークができる環境は以前から整えてきた。ビジネスの都合などもあるので事業部やグループ会社の判断に委ねます」と話す。
内閣府が17日に発表した19年10~12月期の国内総生産1次速報は、物価の変動をのぞいた実質(季節調整値)で前期(7~9月期)比1.6%減。仮にこの状態が1年間続くと、年率換算で6.3%減となる。この時期の落ち込みは消費増税の影響などだったと考えられるが、続く1~3月期には新型コロナウイルスの影響が表れてくる。経済ジャーナリストの岩崎博充さん(67)は言う。