現在も米軍と戦闘を続けるタリバーン兵。今や米国が支援する政府側の勢力範囲はアフガニスタン全土の3割程度にすぎないとみられている(写真:gettyimages)
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アフガニスタンをめぐる主な出来事(AERA 2020年2月10日号より)

 米国がタリバーン政権への攻撃を始めて18年以上。その実態はアメリカ側の敗北だとする報告を米紙ワシントン・ポストが発表し、波紋が広がっている。イラン、シリア戦線と合わせ実質的には米軍の3連敗という惨状が明らかに。AERA 2020年2月10日号では、米政府が長きにわたって隠蔽していたアフガニスタン攻撃の実態を紹介する。

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 アメリカ軍がイギリス軍と共にアフガニスタンを攻撃し、タリバーン(イスラム神学生)政権を倒してから18年余。米軍は今なおタリバーンとの戦いを続けている。タリバーンは勢力を回復して支配地域を拡大、政府側の勢力圏は国土の3割程度にすぎないとみられている。

 米国はなんとか面目を保てる形で停戦、撤兵するため、和平協定を結ぼうと約8年前からタリバーン側と接触し協議を続けてきた。だが優位に立つタリバーンは「外国軍の撤退が先決」との姿勢を変えず、「交渉は大筋合意に達した」と言われつつ、一進一退を繰り返してきた。

 米国はかつて土着のテロ集団のように蔑視してきたタリバーンに和を請う形となった。アフガン人は1979年末から88年まで9年間ソ連軍と戦って勝ったが、米軍との18年余の戦いにも勝利を収めそうな情勢だ。

 アフガニスタン攻撃は失敗だった──。現地の米軍指揮官や国防総省、国務省のアフガニスタン担当者らの間では、2010年ごろにはそう認識されていたにもかかわらず、米政府の発表ではタリバーン部隊の制圧、武装解除や復興計画が順調に進んでいるかのような印象を与える情報操作が行われていたことを示す米政府の内部文書を米紙ワシントン・ポストが入手、昨年12月9日から連載で発表した。

 米下院外交委員会はこの文書をまとめたアフガニスタン特別監察官ジョン・ソプコ氏の出席を求め、1月15日からこの問題の審議を行っている。米政府や軍が国民を欺いてきた事実は大きな反響を呼んでいる。

 ベトナム戦争中の71年にはニューヨーク・タイムズが、米国が本格的にベトナムに介入する契機となった「トンキン湾事件」(北ベトナム魚雷艇が米駆逐艦を攻撃したと発表された)の報告に虚偽があることを示す「ペンタゴン・ペーパーズ」を公表。米国で反戦運動が高まり、ニクソン大統領辞任の遠因ともなった。今回の文書はそれにちなみ「アフガニスタン・ペーパーズ」と称されている。

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