ヒップホップ・アクティビストのZeebraさんが「AERA」で連載する「多彩な野菜」をお届けします。1997年のソロデビューからトップとしてシーンを牽引し続け、ジャンルや世代を超えて多くの支持を得ているZeebraさん。旬の野菜を切り口に、友人や家族との交流、音楽作りなど様々なエピソードを語ります。
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ずっと好きになりたくて。でもあまり好きじゃなくて。僕にとってゴボウはそんな存在です。嫌いなわけじゃないんです。むしろ、味は好きなんです。独特のにおいも全然平気。問題は食感ですね。とにかく硬いでしょ。周囲のものとなじまない。あれさえどうにかなれば好きになれるのに、ってずっと思っていて。おせちの煮物とかも二つぐらいは食べるんですが、やっぱり「うーん、ちょっと」ってなっちゃいます。
戦後の東京裁判で、捕虜だった米兵がゴボウを知らなくて「木の根っこを食わされた」って訴えたという話がありますよね。非難された日本兵は本当に気の毒ですが、米兵の気持ちもわかるんです。僕も、どっかで「根っこでしょ? わざわざ食べなくてもよくね?」って思ってるんでしょう。
あ、でも最近、これは超うまい!と思えたのが、ゴボウスープです。スペイン料理店で出てきたんですが、すりおろしたゴボウがたくさん入っていて、クリーミーで濃厚。やっぱり味は好きなんですよね。長年の微妙な関係が変わるきっかけになるかもしれません。
※AERA 2020年2月3日号