
AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。
青山ゆみこさんによる『ほんのちょっと当事者』は、「大文字の困りごと」を「自分ごと」として考える、明るい社会派のエッセー集だ。著者の青山さんに、同著に込めた思いを聞きました。
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青山ゆみこさん(48)の『ほんのちょっと当事者』は30代の女性がブログに書いた「保育園落ちた日本死ね!!!」のエピソードから始まる。共感の輪は同じ思いを抱いていた女性たちからより多くの人へと広がり、ツイッターには「#保育園落ちたの私だ」など、いくつものハッシュタグが生まれた。2016年の出来事だ。同時期に始まった署名活動には2万8千人が賛同している。
「一人の小さなつぶやきが大きなうねりになったように、日常にある小さな困りごとを考えていくと、社会の問題として浮かびあがってくるんじゃないか、と思いました」
洋服が好きで自己破産しかけた若い日のこと、性暴力、児童虐待、子ども時代の差別体験、派遣労働──身の回りにある困りごとを青山さんは「自分ごと」として書いていく。真摯(しんし)に、でも明るさを忘れずに。
「最初に出版社のウェブマガジンで連載企画のお話を頂いたときは、まったく違う内容を考えていました。でも母の看護と看取(みと)りを経験して、自分の知りたいことや書きたいことが変わってしまったんです」
母親の死後、父親の介護を兄弟と担うことになった青山さん。自分が介護の当事者になって初めて、具体的にどんな制度があるのかを知ったという。
「要介護者である高齢の父と向き合ったとき、私自身が介護の当事者なのだと気がついた。すると、それまでぼんやりと聞き流してきた介護をめぐるあれこれが生々しく、切実に聞こえてくるようになりました。自分がある問題の当事者だと気づくと、立ち上がってくる風景が変わります」