桜を見る会を巡る問題、IR疑惑、側近議員の公職選挙法違反容疑……。数々の問題を抱える安倍政権。国会で追及を受けることになるが、今年は時間がない。
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日本を変えたいからです──。
疑惑の渦中にいる国会議員の言葉に唖然とした人は多かっただろう。昨年の参議院選挙の際、自らの陣営の車上運動員に法定金額を上回る3万円の日当を支払った公職選挙法違反容疑で刑事告発されている自民党の河井案里議員。疑惑発覚後、夫である河井克行前法相と夫婦で行方をくらませていた。
15日深夜、夫婦別々に開かれた会見は、同日、広島地検が河井前法相と案里議員の事務所を家宅捜索したことを受け河井氏側の意向で急遽、セッティングされた。2カ月半ぶりに公の場に姿を現した案里議員。自らにかけられた嫌疑についてどのような説明をするのか。
しかし、蓋を開けてみると「皆さまの信頼に応えるための言葉を紡ぐことができない状態にある。有権者に心配をかけ、誠に申し訳ない」と謝罪こそしたものの、事件の詳細については「捜査中」を理由に事実上の拒否。自らの進退については、辞職も離党も重ねて否定した。
この会見をテレビで見たという、ベテランの自民党国会議員秘書は、計算し尽くされた絶妙のタイミングだったと語る。
「家宅捜索が明らかになったことで、疑惑については捜査中を理由に語らずに逃げることができる。その上、現役の国会議員であれば、家宅捜索を受けても原則として国会の会期中逮捕されない不逮捕特権もある。とはいえ、上(自民党)からも通常国会前にはけじめをつけろと言われていたでしょう。その意味では(家宅捜索は)渡りに船だった。あとは、不起訴を見越して粛々と時間稼ぎですよ」
冒頭の言葉は、有権者に説明責任すら果たさないあなたが国会で何をするのか、という趣旨の質問を記者にされた案里議員が、答えに窮して発した本音かもしれない。ある自民党国会議員は彼女の心中をこう慮る。