パソコンとスマホさえあればいつでもつながれる、つながってしまう時代。時にそれはプライベートな時間を侵食し、ストレスの原因になることも。フランスでは業務時間以外は「つながらない権利」を法制化しているが、そうした取り組みは日本ではあまり進んでいない。浸透させるにはどうしたらいいのか、AERA 2019年12月23日号で取材した。
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パソコンやスマートフォンがあれば、いつでもどこでも仕事ができる時代だ。便利な半面、「休み」と「仕事」の境界線は曖昧になり、夜中でも休日でも、仕事の電話やメールが私生活に割り込んでくる。
業務時間外のメールが多いほど睡眠の質の低下につながるという研究もある。独立行政法人「労働安全衛生総合研究所」の久保智英上席研究員らのグループが15年に、都内のIT企業で働く55人を対象に1カ月間、毎日連続して調査を行った。その結果、業務時間外のメールが多い日は、少ない日に比べ2倍近く睡眠中の覚醒時間が増えた。業務時間外でも仕事に心理的拘束を受けているのが原因という。
業務連絡に常に「つながっている」ことは、心身にも影響がある。だが日本では、「つながらない」取り組みは進みづらい。
ある大手メーカーは、希望者につながらない権利の申請を認めたが、「希望者がいない」(広報部)と打ち明ける。この会社では、勤務時間外や休日にメールを送った人に、「メールは削除されたので勤務時間内に送り直してほしい」などのメッセージが自動返信される機能を取り入れた。海外の親会社に合わせた措置だが、日本では、一方的に送り直しを求めるのは失礼だと、利用しないようだという。
労働法が専門の青山学院大学の細川良教授(法学部)は、日本で浸透させるには、法律化で一律に決めるより、各企業が社員の働き方に合わせて考えるほうが実効性は高いと話す。
「その際に大切なのは、単につながらない状態にすればいいというのではないこと。顧客や取引先の理解を得ることも必要。また、つながっていない時に仕事のことが気になったり、休み明けに大量の仕事を処理することになれば本末転倒。つながらない状態をつくり、かつ仕事も回るようにするためのマネジメントに上層部が取り組まなければいけない」