フリーで巻き返した紀平梨花。4回転は失敗したが、代名詞であるトリプルアクセルはきれいに成功した (c)朝日新聞社
フリーで巻き返した紀平梨花。4回転は失敗したが、代名詞であるトリプルアクセルはきれいに成功した (c)朝日新聞社

 4回転時代に突入した女子フィギュアスケート。GPファイナルではついに紀平梨花も4回転サルコーに挑戦。転倒してしまい結果は4位となったが、そこから得られたものは大きかったようだ。GPファイナルの裏側に迫ったAERA 2019年12月23日号の記事を紹介する。

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 紀平梨花(17)が、4回転の封印を解いた。フリーの冒頭、流れのある助走から、フワッと浮き上がるような美しい回転をみせる。回転の勢いをうまく止められずに転倒してしまったが、回転角度は十分で「4回転サルコー」として記録がついた。

「本当に4回転の時代が来ています。私も時代の流れに乗っていけるよう、挑戦してよかったなと思いました」

 昨季は、紀平がトリプルアクセルを武器にGPファイナル女王へと駆け上がった。しかし今季はロシアの若手3人が、4回転やトリプルアクセルの大技を入れ、圧勝を続けている。紀平が4回転に初挑戦するかどうかに注目が集まっていた。

 ショートは、女子の規定で4回転を入れることはできない。トリプルアクセルを跳べる紀平としては、少しでも優位に立ちたいところ。しかしショートの本番前のウォーミングアップで、違和感があった。

「動きがよくなくて、陸上での回転練習でも脚が締まらない感じがありました」

 そのまま本番に突入すると、滑り始めから身体が疲れていて動かない。トリプルアクセルは両足着氷になり、連続ジャンプは珍しく転倒した。70.71点での最下位発進だった。

「自分の調整ミスなので『これくらいの演技で当たり前』と感じました。すぐに、明日は調整を見直そうと思いました」

 今大会のショート当日は、午前中に公式練習があり、およそ9時間半後が本番だった。ホテルで昼寝をして体力を回復させる予定だったが寝つけず、長い待ち時間を持て余した。

「いつもの本番前は、緊張する間もなく髪の毛やメイクをパッパと準備します。でも今回は睡眠もできずに目をつむっていただけ。結局、朝の練習の動画を見て復習し、緊張して力を使いすぎて、夜には疲れていました。今度は頑張って目を覚まそうとして身体を動かして、疲れ切っていたんです。本番に身体を合わせていけませんでした」

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