タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。
【写真】保護者による体罰を禁じた条例が施行されている東京都ではハンドブックを作成した
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「愛のあるゲンコツならいい」「今では殴ってくれた親や先生に感謝している」。テレビの討論番組などで子どもの体罰の話になると、必ずこういう持論を展開する人がいます。
来春施行の改正児童福祉法などに「体罰禁止」が明記されたことを受け、厚生労働省はこのほどどんな行為が体罰にあたるかを示すガイドライン案を示しました。その中で、「しつけのためだと親が思っても、身体に苦痛または不快感を引き起こす行為(罰)は、どんなに軽いものであっても体罰に該当し、法律で禁止される」と定義しています。具体例として「口で3回注意しても言うことを聞かないのでほおをたたく」「大切なものにいたずらをしたので、長時間正座させる」「宿題をしなかったので、夕ご飯を与えない」などをあげています。
一方で、「道に飛び出しそうな子どもの手をつかむ」「他の子どもに暴力を振るうのを制止する」など、子どもを保護するための行動や、第三者に被害を及ぼすような行為の制止は、体罰には当たらないとしています。
最近は、いわゆるブラック校則と言われる理不尽な校則の見直しや、運動会での危険な組み体操への批判、さらには教育虐待が問題視されるなど、大人が「良かれと思って」「子どもを鍛えるために」やっていることが、しつけや愛情ではなく暴力と認識されるようになってきました。「お前なんか産まなければよかった」などの暴言も、子どもの発達に重大な影響を与えると言われています。
育児中に追い詰められて思わず手が出てしまい、暗い淵(ふち)をのぞいた経験のある親は少なくないでしょう。私も初めての育児では苦しい思いをしました。何が体罰かをはっきりと示すことは、親を加害者にしないためにも必要です。愛の名の下に暴力を正当化するような育児の「常識」は、親にとっても有害なのです。
※AERA 2019年12月16日号