安倍政権が重視するのは、「桜を見る会」の問題を第2の「モリカケ問題」にしないこと。そのための戦略は、大きく分けて二つあるという。
一つ目は、「安倍首相を矢面に立たせないこと」だ。今回、安倍首相は普段は行わないぶら下がり会見に応じ、国会の要請があれば、いつでも説明する用意があると印象づけた。しかし、実際には野党が首相出席の集中審議を求めても、与党がそれに応じることはなかった。政府関係者はこう証言する。
「モリカケが長期化したのは、疑惑の当事者である安倍首相が当初、国会で『私や妻がこの認可、あるいは国有地払い下げに関わっていたのであれば、私は総理大臣を辞める』などと発言してしまったことが原因だった。安倍首相は、とくに昭恵さんが関わる問題に関しては躍起になって自ら弁明しようとするが、すればするほど傷が深くなる。一番いいのは、首相出席の集中審議を開催しないことだ」
その半面、この戦略には安倍首相の代わりに、矢面に立つポジションが必要となる。それが菅官房長官だった。対メディアという意味でも、官房長官会見は、1日2回、毎日、開催されている。主催は「記者クラブ」とはいえ、会見を仕切るのは実質、官邸。しかも菅氏は日本最長の政権を支え続ける辣腕だ。
「あとは時間稼ぎですよ。連日、この問題をやっていれば、必ず、他にも重要な法案があるだろう、と、野党やマスコミの攻勢にうんざりする世論が広がる。その上で、野党が審議を欠席しようものなら好都合。逆にそれが野党にとって痛手になる」(前出の政府関係者)
二つ目の教訓は「内部文書の流出を防ぐこと」だ。モリカケの時、政権を揺るがしたのは野党の追及よりも、むしろ、その都度、政権の内部からメディアに流出した内部文書だった。いま、流出を防止することに、とくに首相周辺は躍起になっているという。ある自民党幹部はモリカケ問題をこう分析する。
「財務省の佐川宣寿理財局長が、ないと断言した森友学園と財務省とのやりとりを示す文書。そして、加計問題をめぐっては『総理のご意向』を書かれた内部文書がリークによって表沙汰になり、これは詰んだなと思った。ないと言い続けてきた文書が出てきたんだから。今回の件でも、破棄したとされている名簿が、何らかの形で出てきたら大変なことになる。官邸はそればかり気にしているはずです」
※【与党議員も「そんな馬鹿な」と思ってる? 「桜を見る会」問題で援護射撃が少ない理由】へつづく
(編集部・中原一歩)
※AERA 2019年12月16日号より抜粋