過去5年の収容遺骨数(AERA 2019年12月9日号より)
過去5年の収容遺骨数(AERA 2019年12月9日号より)
ミャンマー・ブラバロオ村の洞窟から掘り出され、「獣骨」に分類、埋設されていた大量の人骨。同様の杜撰な選別がこれまでなかったとは誰も言い切れない(写真:JYMA提供)
ミャンマー・ブラバロオ村の洞窟から掘り出され、「獣骨」に分類、埋設されていた大量の人骨。同様の杜撰な選別がこれまでなかったとは誰も言い切れない(写真:JYMA提供)
はっきり「獣骨」と書かれたビニール袋には、大量の人骨が含まれていた(写真:JYMA提供)
はっきり「獣骨」と書かれたビニール袋には、大量の人骨が含まれていた(写真:JYMA提供)

 持ち帰った遺骨が日本人のものではない――。フィリピンで、シベリアで、ミャンマーで、厚労省の遺骨収集事業で不祥事が続いている。厚労省はなぜ、DNA鑑定を不可能にする「焼骨」にこだわり続けるのか。AERA 2019年12月9日号から。

【写真】ミャンマー・ブラバロオ村の洞窟から掘り出された大量の人骨

※【ミャンマーでは人骨を獣骨として廃棄 シベリア遺骨問題は「氷山の一角」】より続く

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 そもそも戦没者の遺骨収集と身元鑑定について、日米のレベルはあまりに異なる。赤木さんによれば、米国ではDPAA(国防総省捕虜・行方不明者調査局)という専門機関が(1)戦争歴史家による戦没者の記録調査から始め、現地調査チームを派遣(2)遺骨収集チーム(法医考古学者、法医人類学者、不発弾処理員、医務官、言語学者、軍人らで構成)が30~45日間かけて細かな骨まで拾い集めて洗骨(3)研究所で分別した検体をDNA鑑定専門の研究所に送り、適切な温度と湿度管理をした部屋で保管(4)遺族とのDNA照合を行い、報告書を添えて遺族に返還。マッチングが不調に終わり、遺骨の帰属集団が太平洋戦争のアジア系の場合、日本の厚労省に連絡する──という一連の流れが確立している。

 一方、日本では、(1)厚労省の通訳が米豪の国立公文書館の資料をもとにおおよその埋葬地を特定(シベリアや沖縄、パプアニューギニアなどを除く)(2)厚労省等のチームを10~14日間派遣。南方の場合、現地住民が運んできた骨を体数に合わせて「労賃」を支払って購入、厚労省の団長が日本人であると判断すれば現地で焼骨。シベリアでは目視でモンゴロイドと判断した歯と四肢骨の一部をDNA検体として採取し、残りは現地で焼骨(3)千鳥ケ淵で焼骨された遺骨とDNA検体を引き渡す(4)遺族とのDNA照合。南方のものは高温多湿地域なのでDNA抽出ができないと遺族に説明し、遺留品が見つかってもDNA鑑定をしない。シベリアでは千人ほどについて遺族を特定したと発表したが、どのような報告書を遺族に添えたのか不明という。JYMA日本青年遺骨収集団理事長の赤木衛さん(55)は言う。

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