

在宅医療のニーズが高まる昨今、異業種から看取りや死の現場に飛び込む人が増えている。そうした人々のなかには、死の現場で働くことで自身にも変化が起きたと話す人がいる。AERA 2019年12月9日号の記事を紹介する。
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厚生労働省の「患者調査」によると17年に在宅医療を受けた患者は1日あたり18万人。データがある1996年以降で最多だった。社会保障費削減のため国は在宅医療を推進し、患者側も「自宅で最期を迎えたい」と希望する。30年には約47万人の看取り難民が発生するといわれる。在宅医療のニーズは高まっており、異業種から看取りの現場に飛び込む人は少なくない。
清水和土(かずと)さん(46)は静かにこう話す。
「娘は8カ月の命だったかもしれないけど、80歳まで生きた人と命の重さは変わりません」
東京都町田市にスタジオを構えカメラマンとして活躍するが、「看取り士」としての顔も持つ。
看取り士とは一般社団法人「日本看取り士会」が認定する資格で、余命宣告された終末期の患者に寄り添い、穏やかな旅立ちを迎えられるようサポートする。患者に「寄り添い」、話を「傾聴」し、最期は住み慣れた自宅で過ごしたいと願う人の手助けをする。12年に始まり、いま全国に825人ほどいる。
清水さんが資格を取ったのは2年前。5年ほど前、妻が妊娠8カ月でわが子を死産したことがきっかけとなった。女の子だった。妻が死生観を調べていくうちに出会ったのが看取り士だった。妻は資格を取り、その後、自らも興味を持ち資格を取った。
カメラマンと看取り士──。まったく違う仕事ではあるが、共通点があるという。
「一瞬の出会いの中で何を残せるかが写真の仕事。それは、その時その時のその人の人生を看取る、看取り士の仕事と似ています」
清水さん自身は、まだ看取りの現場に出たことはない。だが、わが子や友人の死をどう受け止めたらよいのかといった看取り学を学ぶことで、自身も癒やされ救われたと語る。
「死に対する捉え方が変わってきました。人の死は自分の価値尺度ではかってはいけない。人生の価値は、時間の長さではなく、その人の存在そのものだと思うようになりました」