ギリギリで失効が回避された日韓のGSOMIA。だが、両国で主張が食い違い、かえって不信感が強まってしまった。双方の言い分は、なぜ噛み合わないのか。AERA 2019年12月9日号では、日韓と米国との関係を踏まえながら解説する。
【驚くほど同じに見える? 日本と韓国の街並みを写真で比較した】
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日本も韓国も、望んだ延長ではなかったのだろう。
土壇場でとりあえずの延長が決まった日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)。一件落着かと思いきや、すぐさま日本と韓国双方が相手を罵(ののし)り始めた。
韓国の鄭義溶(チョンウィヨン)国家安保室長は11月24日の記者会見で「韓日合意の発表前後の日本側のいくつかの行動に、深い遺憾の意を示さざるを得ない」とかみついた。韓国政府当局者も、「日本は譲っていない」という安倍首相の発言について「良心に従った言葉なのか」と激しく非難した。
韓国が怒ったのは、「GSOMIAの破棄通告を停止したのは、日本が輸出管理規制措置を巡る協議に応じ、措置を撤回する動きを示し始めたから」(韓国政府関係者)という論理を、日本側が否定したからだ。
鄭室長は記者会見の際、日本側が事実と異なる発表をしたことに抗議し、謝罪も受けたと説明した。これについても菅義偉官房長官が25日の記者会見で「政府として謝罪した事実はない」と否定した。
双方の言い分は、なぜ食い違うのか。それは、日韓ともに、米国の圧力を受けて無理やり握手した結果だったからだろう。
韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は「日本が輸出管理規制措置を撤回すれば、GSOMIA延長を検討できる」と言い続けてきた。ところが、安倍政権は「輸出措置は日韓GSOMIAとは無関係」「GSOMIAが失効しても、日本には不利益にならない」と切り捨ててきた。日本政府内には「GSOMIAが失効しても、同じ文面を使えば、再締結はすぐできる。韓国の次の政権が登場するまで待っていれば良い」という声も出ていた。