柯宇綸/1977年、台湾生まれ。父は映画監督のクー・イージェン。83年から子役として活動し、「恋恋風塵」(86年)、「クー(クーは牛へんに古)嶺街少年殺人事件」(91年)、「カップルズ」(96年)、「ラスト、コーション」(2007年)、「台北暮色」(17年)などに出演(撮影/写真部・片山菜緒子)
柯宇綸/1977年、台湾生まれ。父は映画監督のクー・イージェン。83年から子役として活動し、「恋恋風塵」(86年)、「クー(クーは牛へんに古)嶺街少年殺人事件」(91年)、「カップルズ」(96年)、「ラスト、コーション」(2007年)、「台北暮色」(17年)などに出演(撮影/写真部・片山菜緒子)
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「あなたを、想う。」名古屋シネマテーク、アップリンク吉祥寺ほか、12月から全国順次ロードショー (c)Dream Creek Production Co.Ltd./Red On Red
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「海よりもまだ深く」発売・販売元:バンダイナムコアーツ、価格3800円+税/DVD発売中 (c)2016 フジテレビジョン バンダイビジュアル AOI Pro. ギャガ
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 AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。

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 台湾ニューシネマの巨匠、ホウ・シャオシェン、エドワード・ヤン、アン・リーらの作品に出演し、台湾の名優と称されるクー・ユールンさん(42)。子役からスタートしたキャリアは、すでに37年にもなる。そんなユールンさんでさえも、本作の出演には戸惑いを隠せなかったという。

「僕がこの作品で演じたのは、両親の離婚によって引き離された兄妹の兄、ユーナン役です。正直自信はなかった。あまり見られたくない一面を映画の中で見せなくてはいけなくなるだろうと思ったから。でもシルヴィア・チャン監督がいたから、安心してそんな一面を見せることができました。彼女は僕に『私と一緒なら、あなたの違う一面を観客に見せることができて、いままでにない火花も生まれるんじゃないかしら』と言ったんですよ(笑)」

 ユールンさんとチャン監督との出会いは、彼の幼少の頃に遡る。チャン監督は俳優として、ユールンさんは子役として親子の役で共演しているのだ。

「チャン監督は優しい。実の母よりも優しくて、あの頃は本当のお母さんだったらいいのにと思ったほどです」

 ユールンさんは当時を懐かしそうに振り返る。二人を再び結びつけたのが、台湾で活躍する日本人俳優の蔭山征彦さんが執筆した短編脚本だった。この脚本に感銘を受けたチャン監督は映画化を決意し、自らも共同脚本という形で人間の感情の背景を加筆していく。自分を置いて出ていった母への複雑な思いを抱きながら生きる、主人公の一人の兄ユーナンを演じられるのは、彼しかない──。そう、ユールンさんを念頭に置いて。

「大人になってわかったことは、彼女は俳優だけではもったいないということ。一流の俳優でありながら、脚本も書くし、監督もする。その作品は非常に描写が細かくて丁寧で、人々の心をとらえています。今の世の中では、丁寧に人間の感情を描くことを重要視する監督は少なくなっています。映画の中で人間の情感を描こうとせず、むしろ監督自身を表現しようという人も多い。僕が思う素晴らしい監督とは、映画を通して人間の情感や感情をリアルに観客に届けようと探求している人。チャン監督も間違いなく後者です」

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