そんな中、小3のAくんは「お母さんに怒られるもん。あと、周りの人にこそこそ言われるのも嫌やし」と正直な気持ちを吐露してくれました。
同じ結論でも、その理由の違いが浮き彫りになってきます。
「じゃあ、もし優先席に座っていて、次の駅でお年寄りが乗ってきたらどうする?」
当初の条件を少し変更し、再び問いかけます。
「そりゃ、『どうぞ』と席を譲るに決まってるやん」
「私も!」
「僕は何も言わずに席を立つ、かな。そっちの方が相手も気を使わへんと思うし」
普段の教室での振る舞いから、応対の様子がなんとなく想像がつくのが面白いところです。
他にもいくつか追加条件を出した後、今度は立場を変えて、車内で体が不自由な人がいるのに席を譲らない人を見かけた場合にどうするか聞いてみることにしました。
子どもたちは実際に同様の場面に遭遇したことが何度もあるようで、思わず声があがります。
結果的に、年上の人に直接物申すのは怖いというのが全員に共通する意見でした。
ただ、小4のKくんからは、小さい声で「席を譲れ~」と呪文のように唱えるという予想外の意見も飛び出します。
以前にその作戦を実施した際に効果があったという彼の主張に対して、「ほんまに?」とクラスメートからも笑いがこぼれます。
ふりかえりでは、自分の意見の根底にある判断基準はいったい何なのかについて考えました。
今後ケーススタディーを繰り返すなかで、はたして自分の判断基準にどんな特徴が見えてくるでしょうか。
※AERAオンライン限定記事
○山田洋文(やまだ・ひろふみ)/1975年生まれ、京都府出身。教育家。神戸大学経済学部卒。独立系SIerのシステムエンジニアを経て、オルタナティブスクール教員に。2016年4月、京都市内でプロジェクト学習に特化した探究塾の探究堂(http://tanqdo.jp/)を開校。探究堂代表、認定NPO法人東京コミュニティスクール理事。