白石和彌監督の新作映画「ひとよ」で3兄妹を演じた佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優。人気と実力を兼ね備えた3人の会話には笑いが絶えず、充実感が伝わってきた。AERA 2019年11月18日号から。
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映画「ひとよ」は父親の暴力から子どもたちを守るため夫を殺害した母親と、15年後に再会した3人の子どもたちの姿を描くヒューマンドラマだ。3兄妹を演じたのは、長男・大樹に鈴木亮平、次男・雄二に佐藤健、長女・園子に松岡茉優。3人と、母・こはるを演じた田中裕子との共演が見ものだ。
佐藤健(以下、佐藤):念願かなっての初共演だったので、一緒に芝居をしている時はとにかく裕子さんの芝居を目に焼き付けようと考えていました。裕子さんはまねしたくてもできない境地にいる方。存在感が特別でした。
鈴木亮平(以下、鈴木):僕は昔、裕子さんのまねを試みたことがあります。高倉健さん主演の「夜叉」で好きなセリフがあって。裕子さんは居酒屋の女将役で、「商売繁盛笹持って来い来いや」って。それを聞いた瞬間「うわっ、なんやこのセリフ回し!?」と衝撃を受けた。ちょうど役者を目指していた20歳くらい。何週間かそのセリフをまねしていたんですが、全然似ず。やっぱりオンリーワンなんだなと思いました。
松岡茉優(以下、松岡):鈴木さん、すてきです!
鈴木:ただ、「田中裕子さんが」と思ってしまうと、母を憎めないし愛せない。現場にいる時に気を抜くと「田中裕子だ!」と思ってしまうので、それを抑えて「オカンだオカンだ」って思うようにしていました。
佐藤:僕は「田中裕子だ!」と、高揚しながら芝居していましたよ。ミーハー根性丸出しでした。
松岡:私は「はじまりのみち」という木下惠介監督の生誕100年記念映画で少しだけご一緒したことがあるんです。その時はまさに神様みたいな役だったこともあり、まさかお母さん役の田中さんとご一緒できるとは想像してもいなかったので、本当にうれしかったです。