職人の経験や勘に頼らず、ベストの熟成タイミングのマグロを食べられるようになりそうだ
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 マグロが一番うまくなるのは、48時間熟成させたタイミング--。東京大学大学院の眞鍋昇名誉教授が7日、そんな研究成果を発表した。マグロを一定の温度の塩水の中で熟成させ、うま味成分や香り成分が時間とともにどう変化するかを調べた結果、熟成開始から48時間後が最もバランスがいいことが分かったという。

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 研究は、東京大学大学院農学生命化学研究科と回転寿司大手のくら寿司が共同で行った。くら寿司が、同じマグロから切り出した赤身の切り身を一定温度に保った塩水につけ込んで熟成。熟成開始から0時間(つけ込み前)、24時間、36時間、48時間、72時間、120時間経った時点で冷凍して熟成を止めたものを、大学院で分析した。

 分析対象にしたのは、うま味成分であるグルタミン酸とイノシン酸、香り成分のトリメチルアミン。分析の結果、グルタミン酸とトリメチルアミンは熟成開始後右肩上がりに増えていくのに対し、イノシン酸は徐々に減っていくことがわかった。また、トリメチルアミンは微量なら「いい香り」と認識されるが、増えすぎると腐敗臭と感じられるという。

 眞鍋教授らはこの三つのバランスを検証し、味、香りともに最高のバランスになるのは熟成開始後48時間後の切り身であることを突き止めたという。くら寿司はこれまで、36時間熟成させたマグロを「熟成まぐろ」として提供していたが、8日からは48時間熟成のものに切り替えるという。

 眞鍋教授は「最適なマグロの熟成時間を科学的データに基づいて導きだし、科学に基づいたおいしさをお届けできるようになった」とコメントしている。(編集部・上栗 崇)

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