皇居・宮殿で開かれた祝宴「饗宴(きょうえん)の儀」には、164の国と地域、国際機関から招待された249人を含む約300人が出席した。午後9時ごろから宮殿の「豊明殿」で始まり、招待客の中でも在位期間が長いブルネイのボルキア国王とスウェーデンのグスタフ国王が、両陛下の隣にそれぞれ着席した。
料理は、プリンスホテルのシェフが担当した。カスゴダイ姿焼きやエビ鉄扇、アワビ塩蒸しなど和食を中心に提供された。燕尾服やロングドレス、民族衣装で出席した各国の王族や大統領たちが和やかな雰囲気の中で食事を楽しんだ。療養中の皇后雅子さまが06年に静養先としてご一家で滞在したオランダのアレキサンダー国王夫妻や、ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問らの姿も見られた。
即位礼正殿の儀をめぐっては、憲法が定める国民主権や政教分離の原則に反するという指摘があるが、安倍晋三首相が委員長を務める式典委員会は再検討せず、前例を踏襲した。
一方で、今回は生前退位によって祝福ムードが強かったためか、批判や異論の声はそれほど高まらなかった側面もある。この日、皇居周辺には各地から大勢の人が訪れた。
長野県飯田市から1人で訪れた女性(77)は「パレードが中止になったのを知らずに上京してしまいましたが、儀式の日に皇居のそばに来て幸せな気持ちになれました」。鳥取県倉吉市で農業を営む男性(42)は、妻(36)と長女(2)を連れて上京した。「パレードは残念でしたが、節目の日に皇居に来ることができたのは良かった」と喜んでいた。
ただ、人々の心を大きくざわつかせた場面があった。
即位礼正殿の儀の締めくくりに、安倍首相が万歳を三唱、参列者が唱和し、それに合わせて北の丸公園では陸上自衛隊の礼砲部隊が礼砲を21発、発射したシーンだ。SNS上にはこんな書き込みもあった。
「万歳三唱からの21発の礼砲とか、儀式だけに怖いって感覚」
「戦時中のそれみたい」
時代を巻き戻したかのような流れに、違和感を覚えた人たちも多かったようだ。
台風19号で延期となった「祝賀御列(おんれつ)の儀」は11月10日に改めて実施。天皇、皇后両陛下がオープンカーで皇居から赤坂御所まで移動する。(編集部・小田健司)
※AERA 2019年11月4日号