結婚の前後で、共にオックスフォード大学へ留学された経験を持つ天皇皇后両陛下。留学経験がある天皇、皇后は、皇室の歴史上お二人が初となる。順風満帆とは言えなかったお二人のこれまでの歩みについて、ご学友の話を元に振り返る。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。
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当時からお妃候補の一人として名前が挙がっていた雅子さま。留学中、報道陣から陛下との結婚の可能性を聞かれた際には「結婚はありえない」と返したこともあるが、帰国後、陛下との交流は復活した。5年間の空白を埋め、お二人の関係をより強固なものにしたのはやはり、オックスフォード大での共通の体験ではなかったか。
ハリー・ポッターの世界のように、スポーツの対抗戦ともなると、カレッジごとの結束は固いが、留学時期やカレッジが異なっても、同窓生ならではの「共通体験」は少なくない。たとえば、必死に勉強した試験の後に全力で飲み、騒ぎ、踊るパーティー「BOPS(ボップス)」もそうだ。
皇后雅子さま(55)の当時のご学友、土地陽子さんは言う。
「なぜボップスと呼ぶのかはわからないけれど、同窓生にしかわからないそういった言葉や事柄がたくさんある。誰もが足しげく通った英国最古の図書館、食堂での夕食の前に決まって唱えるラテン語のお祈り。一つひとつが大切な思い出です。卒業して何十年経っても、すぐにわかりあうことができる」
93年1月、お二人の婚約決定後の記者会見で、陛下は雅子さまと初めて出会ったときのことをこう語っていた。
「まず、非常に控えめですが、自分の思っていることをはっきりとおっしゃって、それでいて非常に聡明であること。それから、話題にも共通性があって、心が通じ合うというような、そういう感じを強く持ちました。したがって、話していて楽しい人というのがまず最初の印象でした」
「共通の話題」として例に挙がったのは、音楽やスポーツ、そして歴史や政治・経済などだったが、その後、オックスフォードでの体験がお二人の話題に上らなかったはずはない。対話型の授業で培われた思考力。さまざまな分野で学びを深める友人たちとの食堂や寮での会話。各国からの留学生と交わり、多様性を実感するといった共通体験が、5年の時を経た再会を確かなものにしたのだろう。