栗山英樹(くりやま・ひでき)/1961年、東京都出身。東京学芸大卒、84年にドラフト外でヤクルト入団。監督としてリーグ優勝2度。2018年に監督通算1千試合、500勝を達成した(撮影/遠崎智宏)
栗山英樹(くりやま・ひでき)/1961年、東京都出身。東京学芸大卒、84年にドラフト外でヤクルト入団。監督としてリーグ優勝2度。2018年に監督通算1千試合、500勝を達成した(撮影/遠崎智宏)
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 球界を代表する知将で、大谷翔平ら新人の育成にも定評がある栗山英樹。背骨となっているのは、論語なども参考に自身の考えをつづった「栗山ノート」だ。AERA 2019年11月4日号に掲載された記事を紹介する。

【画像】AERA表紙を飾った大谷翔平

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 10月17日のプロ野球ドラフト会議で、日本ハム監督の栗山英樹(58)は満面の笑みでガッツポーズを見せた。外れ1位ながらJFE西日本の投手、河野竜生をオリックスとの2球団競合の末、交渉権獲得の当たりくじを引き当てた。くじ引きは2013年3連敗、16年2連敗。6度目の挑戦での「初勝利」だ。

「監督をやっていると、どうやってもどうにもならないときがある。僕らが望んでいる場所にたどり着くには、天の意識が働くような気がします。普段どんな生活をしているのか、どう人と接しているのか。どんな価値観をもっているのか。やればやるほど、そこが重要だと思う」

 食堂で、新人選手が席を立つとき「椅子を全部入れよう。俺もやるから」と促すこともあるという。「あとで人が通りにくい。自分がどうすればみんなが快適に過ごせるかという目線は、どうプレーすれば貢献できるか、試合がうまくいくかという気づきにつながる」

 野球のみならず、スポーツマンシップが求められるアスリートたちは「普段の生活」が自身の成長や勝利に結びつくことを知っている。周囲に感謝し人のために動こうとする、人として正しくあろうとすることで気持ちは充実し、自尊感情が増す。そのことが好影響をもたらす。

 このことは、栗山が出会った選手も証明してくれた。

 16年12月24日。クリスマスイブの夜中に、広報担当者から送られてきた動画を見たときの衝撃は忘れられない。

「監督、クリスマスプレゼントです。監督が一番喜ぶ映像です」

 そんなメールに添付されていたのは、大谷翔平(25=現ロサンゼルス・エンゼルス)が夜間練習をしているものだった。

 大谷は日ハム4年目のこの年、チーム10年ぶりの日本一に貢献したものの、翌年3月に控えていたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を見据え、オフ返上で自主練習していたのだ。22歳。遊びたい盛りの若者が、自分が今何をすべきかを知っていた。

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