AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
【夏帆出演映画「「ブルーアワーにぶっ飛ばす」の場面写真はこちら】
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「私を好きって人、あんまり好きじゃない」──仕事も結婚も手に入れながら、どこか満たされない30歳のヒロイン砂田を演じた夏帆(28)。
「台本を読んだとき『この役は絶対、ほかの人にやってほしくない!』と思ったんです。そんなふうに思ったこと、いままでなかったんですけど」
自称・売れっ子CMディレクターの砂田は愛想笑いで仕事をこなし、居酒屋では人生に毒づく。ふりきれた芝居が、爽快なほどハマっている。
「砂田には『子どものころはあんなにのびやかで自由だったのに、いまはどうなんだ、自分?』という葛藤がある。それは私にもあるんです」
12歳で芸能界に入り、16歳のとき「天然コケッコー」で純真な中学生を演じて注目された。以後さまざまな役を演じてきたが、いまだ残る可憐で清純なイメージと、年齢とともに変化してきた自分自身にギャップを感じることもあった。
「もちろん役者という仕事は見る方にどう受け取っていただいても自由なのですが、そうしたイメージに縛られて『これは、やらないよね』と役柄に制限が出てしまうのは嫌だなと思っていました。今回の砂田役を通して、自分もまた違う場所に行けるんじゃないかな、と思ったんです」
同世代として、砂田に共感できる部分も多かった。
「30歳は大人だと思っていたけれど、実際の自分は全然そうなっていない。むしろ子どものころのほうがしっかりしていた?と思うくらい、不安定で揺らいでいる。満たされているはずなのに寂しかったり。でも人ってみんなどこか、そんな寂しさを抱えているのかなと思うんです」
監督の自伝的要素も強い。
「監督がこれだけ自分をさらけ出しているので、私もちゃんと自分自身と向き合おうと思いました。日々抱えている葛藤やうっぷんが役に反映されていると思います」