9月9日に千葉県を直撃した台風15号の影響で起きた大規模な停電。長期化した原因を探ると、全国で同様の被害が多発する可能性が浮かび上がる。AERA 2019年10月7日号に掲載された記事を紹介する。
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今回の停電の最大の要因は記録的な暴風だ。電柱や鉄塔は毎秒40メートルまでの強風に耐えられるよう設計されているが、台風15号は千葉市で57.5メートル、館山市で52メートルの最大瞬間風速を記録した。
送電網は文字どおり網の目のように張り巡らされており、通常は1カ所が途切れても他のルートを迂回して電力を供給できる。ただ今回は事情が違った。
「停電の原因となる配電線の事故の場所が複数箇所で発生したことに加え、停電が長期化したエリアでは、配電線が離れており、迂回ができない状態だった」(広報部)
長期化したのは、都心部に比べ利用者が密集しておらず「網の目」が密でない地域とみられる。こうした事態を受け、電柱や鉄塔の設置基準見直しも議論になりそうだ。菅原一秀経済産業相は「原因を究明・検証した上で、技術基準の見直しが必要であるかどうかも含めて判断をしていきたい」(17日の閣議後の記者会見)と話している。
もう一つの大きな原因が倒木だ。停電が長期化したエリアの多くは山間部で倒木が電柱に倒れかかったり、事故現場への道をふさいだりしていた。
千葉大学の小林達明教授(緑地環境学)は、千葉県東部の山武(さんむ)市で、病にかかったスギの木が強風で倒れ、路面を埋め尽くす光景を目の当たりにした。同市では山間部を中心に、総戸数2万9600戸のうち最大1万7700戸が停電。復旧したのは、21日の午前0時47分だった。
小林教授は話す。
「菌により幹の外側が腐るスギ非赤枯性溝腐病(ひあかがれせいみぞぐされびょう)にかかったスギがバタバタと倒れ、停電の復旧工事を妨げていました。昔は建材などに使われた、ブランド杉の山武(さんぶ)杉です。スギの価格が低迷し、林業の衰退で放置されて荒廃し、病気が広がりました」
担い手不足などによる林業の衰退は全国的な問題だ。小林教授はこう続ける。