「南房総市では、林業の常識では倒れないとされる広葉樹も倒れていました。千葉に限らず、林業の衰退で所有者不明の森林が増え、管理が行き届いていない。気候変動で毎年のようにくる強い台風に適応する戦略を考えていかなければなりません」
長野県茅野市北山では9月2日、倒れると電線などのライフラインに触れる可能性の高い木の予防伐採が始まった。茅野市では昨年9月の台風24号で、倒木により大規模な停電が発生した。茅野市農林課の担当者はこう話す。
「限られた500万円の予算ですが、電気の供給の元となる変電所周辺や、停電被害の大きかった別荘地を中心に、今年度は50本を伐採する予定です」
県は森林づくり県民税(森林税)を財源に、茅野市を含む16市町村に予防伐採の予算2500万円を割り振っている。
関西電力は昨年12月、1300本以上の電柱が折れ、のべ約220万軒が停電した台風21号の被害と、その対応策をまとめた。電力供給の支障となった電柱881本が折れた原因の約9割が、「飛来物・倒木・建物倒壊による二次被害」だった。
「障害物の除去は自治体と連携が必要ですが、急を要する場合など、関西電力自身で土砂崩れや倒木による通行不可に対応するために、多目的作業車の配備を進めています。また、被害全容の早期把握のために、ドローンの導入も進めています」(関西電力の広報担当)
住宅や商業施設を集約する「コンパクトシティー」化や「電柱の地中化」を求める声も上がる。しかし、横浜国立大学大学院工学研究院の大山力教授(電力システム工学)はこう話す。
「都心部ならともかく、今回のような山間部の配電線をすべて地中化するにはかなりの費用が掛かり、電力会社が内部で負担できるレベルではない。コンパクトシティーの考え方を含め、しっかりした社会的合意が必要になってきます」
多くの課題を残していった台風15号。気候変動が加速するなか、対策がセクシーかどうかを議論している余裕はない。(フリーランス記者・澤田晃宏)
※AERA 2019年10月7日号より抜粋