通常の集中治療室とは独立した循環器集中治療室を設置し、24時間体制で救急患者を治療できる体制を整備。19年11月からは、同院8階が心臓病診療の専用フロアとなり、病床数も47床から86床へと拡大。20年5月に、現在の「川崎心臓病センター」に改称しました。

 同センターのセンター長であり、心臓外科主任部長も務める高梨秀一郎医師と、循環器内科主任部長を務める桃原哲也医師は、同院に赴任するまで、循環器専門病院である榊原記念病院の心臓外科と循環器内科のトップを務めていた心臓病治療のエキスパートです。

 川崎幸病院は、以前から大動脈手術に定評があり、全国でもっとも多く実施している病院でしたが、19年に高梨医師と桃原医師が赴任してから、大動脈疾患以外の心臓病の手術件数も増えています。

「一般的に、心臓外科でおこなわれる緊急手術の約8割が大動脈疾患です。すでに診療実績のある大動脈疾患の患者さんは、全国の医療機関からの紹介もありますが、やはり救急搬送も多い。緊急以外の心臓病患者さんの多くは近隣の中核病院と地域の開業医からの紹介なので、患者さんが受診するルートが異なります。大動脈疾患を大動脈センターで診ることで、心臓病センターではそれ以外の心臓病に特化し、予定された手術でクオリティーの高い治療をおこなうことができます。それが川崎幸病院の心臓病診療の強みだと考えています」(高梨医師)

川崎幸病院の心臓外科主任部長・川崎心臓病センター長の高梨秀一郎医師
川崎幸病院の心臓外科主任部長・川崎心臓病センター長の高梨秀一郎医師

 同院に赴任した当初、高梨医師は、院長であり川崎大動脈センターの創設者でもある旧知の山本晋医師に、「心臓病と大動脈疾患を分けず、一緒に診たほうがいいのでは」と意見したことがありました。それに対し、「分けたほうがいい」と返した山本医師。その狙いは、心臓病と大動脈疾患の治療部門をそれぞれ独立させることで、より質の高い医療を実現することと、患者さんにとって、よりアクセスしやすい形にすることでした。

 それ以来、高梨医師は心臓病センターでハートチームの形成に尽力しながら、同院の心臓病治療を地域の医療機関に周知することにも注力してきました。

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地域との連携を進め紹介患者数が増加