小3からキーパーを務め、高校はサッカー推薦で入学した上野浩太郎さん(奥)。一度諦めたぶんキーパーを続けられる喜びは大きかった(撮影/藤田和史)
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川村大聖さんの右手指は機能全廃、右足の膝下は先天性の欠損。右手を自由に使えないため、ほかの選手より体力の消耗が激しくなる(撮影/藤田和史)

 東京パラリンピックの開催まであと1年。なじみのなかった競技の知名度も上がってきた。障がい者スポーツはパラリンピック競技以外にもまだまだある。手足に切断障がいを持つ人たちが、義足や義手を外してプレーするアンプティサッカーという競技の選手たちを取材した。

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「関西セッチエストレーラス」でゴールキーパーとして活躍する上野浩太郎さん(19)は18年4月、勤務先の工場の機械に右腕を巻き込まれ、肘から下を切断した。

 上野さんは、「切断自体はなんとも思ってない」と話す。右手がなくなったからといって別に性格が変わるわけでも、友達がいなくなるわけでもない。ただ……と、言葉をつないだ。

「僕がアンプティを始めて、周りの人は変わったかもしれない。それまでは声をかけにくかったと思うんですよね。心配してただろうし。でも、僕がアンプティでキーパーを続けてるって言ったら、『がんばれ!』って応援してくれて。僕が元気にプレーしてる姿を見て、みんなが笑顔になっていった。心配が応援に変わったんです」

 生まれつき手足に障がいを持つ同チームの川村大聖さん(41)も、アンプティサッカーに出会って変わった一人だ。

「小学生の頃、障がいのことをからかわれたんです。それが嫌で右手を隠してたし、義足も見られたくなくてずっと長ズボンを穿いていました。でもアンプティだと、みんな義足や義手を外して走り回ってるじゃないですか。僕は今までなにを思って隠してきたんだろうと。うれしくなって、買ったことがなかった短パンをめっちゃ買いました(笑)」

 チームの代表を務める理学療法士の増田勇樹さん(33)は、アンプティサッカーのメリットについて次のように話す。

「身体面では、残存機能の向上が大きなメリットです。精神面では、同じ境遇の人たちと接することで、障がいに対する見方が変わります。仲間ができることで、ポジティブになっていく選手は多いですね」

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