かたや発泡酒や第3のビールは、この原料が違う。最大のポイントは、麦芽の比率だ。

 発泡酒は「麦芽比率50%未満」または「麦芽比率50%以上であっても、規定量を超えて副原料を使用したもの」など。第3のビールとなると、麦芽ゼロのものも現れる。正確に言うと「(麦芽ではなく)大豆やえんどうといった穀類、糖類などの原料を発酵させたもの」や、「麦芽比率50%未満の発泡酒に、ほかのスピリッツなどを加えたもの」などだ。

 と、ややこしいのだが、一番わかりやすい見分け方は値段だ。ビールは1本200円前後、発泡酒は130円台、そして第3のビールは110円台など、価格を見るのがもっとも確実な分類方法となっている。

 ここで重要なのは、安いのは原料をけちっているから……というわけではない、という点だ。価格の差の多くは、酒税の違いによるもの。現在、ビールの税額は350ミリリットル缶1本あたり77円なのに対し、発泡酒は同47~62円、第3のビールは同28円と大きな差がある。1990年代に発泡酒が、2003年には第3のビールが、原料を工夫することで低税率を実現してきた。

 税の網目をかいくぐる企業努力の効果もあり、押しも押されもせぬビール類の花形商品となった第3のビール。だが今、その先行きにとんでもない暗雲が立ちこめている。それが20年、23年、26年と3回に分けて施行される酒税法の改正だ。

 3回目の26年には、ビール、発泡酒、第3のビールの税額が同55円に統一される。つまりビールは値下がりする一方、第3のビールは大きく値上げされる計算だ。

「7年も先の話でしょ」と甘く見てはいけない。20年には、第3のビールにかかる税が11円引き上げられ同39円に。23年には、第3のビールというジャンルそのものが廃止され、発泡酒に統合される予定だ。消費税率10%も目前に迫り、第3のビールのお得感を満喫できる日々は刻一刻と終わりが近づいているのだ。(ライター・福光恵)

AERA 2019年8月12・19日合併号より抜粋