我が家は昨年、ワシントン州シアトルからアラバマ州のハンツビルという町に引っ越しました。シアトルはone of the whitest large cities(白人最多の大都市のひとつ)と言われるくらい白人の多いところで、2017時点で白人の比率は68.63%です。一方、黒人はわずか7.1%。さらに1968年まで黒人に対する居住差別が許されていた名残から、今でも黒人市民の住むエリアが固まっていて、黒人たちと知り合うどころか、見かける機会も多くありませんでした。

 それが、黒人比率30.84%のハンツビルに越してきて、途端に黒人たちと接する機会が増えました。学校の先生も、カフェの店員さんも、ヨガ教室のインストラクターも黒人。昔は失礼ながら初見で「あっ、黒人さんだ」と思っていたのが、今では「気持ちよく笑う人だな」とか「さすがヨガの先生、かっこいい体型」など、相手の肌の色ではなく、もっと人間性のようなものについて思いを馳せられるようになりました。

 変化は当時2歳の娘にも現れました。アラバマに来たころは「どうしてあの人、黒いお顔をしているの?」と無作法な質問をしていた娘でしたが、数週間もすると何も言わなくなりました。プリスクール(保育園)にも黒人のクラスメートが多いですが、友だちの紹介をするときは「〇〇ちゃんはピンクの服を着ている」とか「□□くんは青い車に乗っている」などと説明し、肌の色に言及することはありません。

 要は、“慣れ”なんだと思います。アラバマには今でも人種の断絶がありますが、少なくとも肌の色を意識しなくていいくらいには、たくさんの黒人がいます。さまざまな表情の、さまざまな性格の黒人たちと会うことで、わたしの意識に根を張っていた「黒人」という枠組みがスッと溶けてなくなりました。

「人種平等」などと崇高な思想を掲げても、人間の意識ってなかなか変わらないんじゃないでしょうか。だから、無理やり“慣れ”させることが大切なんだと思います。白人だらけの現状にエイヤッと黒人を投下して、軌道修正する必要があるんだと思います。

 最初は不自然に見えて、たくさん批判が来るでしょう。でも、そのうちみんな慣れて何も言わなくなります。プリンセスに白人と有色人種が同じ数いれば、肌の色ではなくドレスのデザインやプリンセスの性格でお気に入りのひとりを選べるようになります。

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