



今月もまた、行けなかった。ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん(45)は、忙しさのあまり、大好きなヨガをするために入会していたジムに通えない日が続いていた。会費は月1万6千円。丸々どぶに捨てているようで惜しくなり昨年6月、ジムをやめた。
足が遠のき始めたのは2年前。離婚し、現在小学4年生の長男を一人で育てることになってからだ。幸い独身時代に埼玉で購入した分譲マンションを貸し出しており、月11万円程度の収入があるが、それでも赤字だ。狭い間取りのマンションに引っ越したが、都心に住み続けているせいもある。
「離婚でつらい思いをさせたので転校させるのは可哀想で。家賃の相場が高い分、見直せることがないか、暮らしを再点検しています」
ジムの会費は10年経つと192万円に上る。長年飲んでいたサプリメントは、10年で41万4720円も払っていた。「定期購入をやめましたが、特に体調に変化は見られません」と苦笑する。
同じく30万円以上かけていた美容オイルは、代わりに安価で良質な品を探し、4分の1以下の負担に。通信費も大幅カット。モバイルルーターを解約し、大手通信事業者から格安SIMへと乗り換えた。スマホ、ガラケー、キッズ携帯の3台で月額6千円になり、10年で118万円余り浮く計算だ。
「データプランのみのコースにしましたが、LINEで通話すれば不自由は感じません」
いずれも、見直し後に不便を感じていない点が共通している。
教育費についても、攻めの姿勢で臨んでいる。ゲームが好きな長男が興味を示したプログラミング教室は、月1万3500円かかるが続行中だ。
「本人が面白がっていますし、将来的にニーズも高いスキルだと思うので通わせています」
家電にも高度なプログラミングが求められる時代。その学習費は単なる出費ではなく、長男の将来のための投資と言える。
「私立中学に通わせるより、手に職をつけさせたい。プログラミングのスキルを身につけていれば、仕事に困ることはないと思うんです」
本人が望んだ公文やスイミングスクールも継続しつつ、自宅での学習には、インターネット上の無料の教材をプリントして活用。中学を卒業するまでの6年間で、約350万円近い費用が浮く計算になる。
かつてコンビニで店長を務めた丸山さんが提案するのは、“消えもの”の出費を抑えること。たとえば350ミリリットルのビールを2缶買う客が多かったが、それを500ミリリットル1缶にするだけで、年に5万4千円節約できる。
「どうせ2本飲んでしまうなら、このほうがお得。発泡酒に替えることなくビールを味わうように、どの分野での見直しも楽しみを捨てないことが肝心です」
(ライター・大西洋平)
※AERA 2019年7月15日号