他にもロシアのクリミア占領を機に、2014年に結成されたウクライナの医学ボランティアの現状を最前線で追う『Eastern Front』や、東ウクライナの庶民の状況を追う『In Ukraine』、2014年以来戦地と化したドンバス地区に住む5人の10代の若者を追う『We will not fade away』、2014年ウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空MH17便の謎を考察する『Iron Butterflies』など、多くのウクライナものが関心を集め、イベント『A Close Look:Current Docs from Ukraine』なども開催され、熱い論議が交わされた。
また指摘したいのは、本映画祭ではウクライナばかりでなく、さまざまな国の多様な状況をとらえる多くのドキュメンタリーが上映されたという点だ。
一方、ドイツ・テニス界の大物、ボリス・ベッカー氏の栄光と転落を追うドキュメンタリーは、アレックス・ギブニイ監督の『Boom Boom Boris vs World』。特別部門で上映された。本国ドイツ、ベルリン映画祭だからこそ一見の価値あり、の一本だろう。
ベッカー氏は、破産宣告を受けた後に250万ポンド(約4億円)相当の資産などを隠したとして昨年4月、ロンドンの裁判所で禁錮2年6カ月の実刑判決を受けて服役した。その後、イギリス国内での早期釈放制度によって昨年12月に釈放され、ドイツに強制送還されたことがイギリスで大きなニュースになったことが記憶に新しい。
まさか、と思ったが本人がベルリン入りし、記者会見に臨んだ。
若い世代には否定的な印象しかないかもしれないが、4大大会男子シングルスで通算6勝を挙げるなど、80年代のドイツ・テニスの黄金時代を築いたベッカー氏だ。最年少記録である17歳7カ月にしてウィンブルドンで優勝を果たし、スーパースターとなり彼の人生は劇的に変化した。
