驚かされるのは、FB以外の27社の顔ぶれだ。
まず、目立つのは、米カード大手のビザとマスターカードだ。世界的なカード大手2社が参加することで、「リブラ」を使える世界の店舗は5千万規模に達するという。音楽配信大手「スポティファイ」やライドシェア最大手「ウーバー」など、幅広いサービス企業も集まった。来年のサービス開始当初から、世界各地の店舗だけでなく、ネット上のさまざまなサービスで「リブラ」を使うことができるようになる。
そして、なんといっても大きいのは、FBが抱える巨大な利用者網だ。投稿サイト「フェイスブック」以外にも、メッセージングサービスの「メッセンジャー」や「ワッツアップ」、写真投稿サービス「インスタグラム」ら、FBグループ全体の利用者は、世界で実に27億人に達するのだ。
FBは、「メッセンジャー」と「ワッツアップ」上で、仮想通貨「リブラ」をやりとりできるようにする考えだ。メッセージをやりとりしながら、気軽に「リブラ」の送受信もできるようになるという。20億人を超える規模の人たちに、「リブラ」が身近に登場する効果は、いままで仮想通貨を使ってこなかった人たちにも利用を広げる意味で、きわめて大きい。
ただこれまで、ビットコインなどが、「モノやサービスを買ったときに、対価として支払う」という通貨本来の機能で利用されることは限定的だった。仮想通貨は、投資対象という側面が強く、価値が乱高下してきたためだ。
この課題を解決するため、FBらが今回導入するリブラの価値を安定化させる仕組みは、興味深い。
「リブラ」は、仮想通貨の発行額に応じ、主要通貨や主要短期国債などで100%の準備金を差し出すことを求めるのだという。通貨はリブラ協会のみが「鋳造」も「破壊」もでき、ネット上で人々が行う「発掘」はできない仕組みなのだ。
「リブラ」を、実際の通貨や国債という資産に裏打ちされた仮想通貨とすることで、主要通貨のように短期間に大きく価値が変動することがないようにする狙いがある。また、ネット上で突然「発掘」されることもないので、予期せぬ「通貨増」で、価値が急に下がることも防ぐ取り組みだ。