
地域医療を支える病院で医師の一斉退職が起きた。こうした事態は過去にもたびたび起こっている。背景には何があるのか。
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地方独立行政法人・市立大津市民病院(滋賀県大津市)で、救急医6人が今月末に一斉退職する。今月10日、病院関係者は大津市議会の会派を回っていた。その2日前の朝日新聞の朝刊でこの問題が報道され、急遽、議会対応を迫られていた。
「7月からのER(救命救急室)の体制はどうなるのか」
議員の質問に、増田伊知郎理事長はこう断言したという。
「ほかの医療機関からの医師の応援や院内の調整などで、7月以降もこれまでと同じ体制を維持できる」
病院法人事務局の説明によると、退職するのは「救急診療科・集中治療部」の7人の常勤医師のうち6人。「指導医」を務めていた診療部長が退職を申し出たことから、4人の「専攻医」と呼ばれている若手の医師も続き、別の1人も退職を決めた。
会派への説明の場で個別の医師の退職理由について説明はなかったというが、増田理事長は、退職が一斉になったことについて、こう説明した。
「指導医が辞めれば専攻医も辞めてしまう。医師の世界ではあり得ることだ」
背景事情は一様ではないだろうが、地域医療を脅かす医師の一斉退職は、過去にもたびたび起きている。
2017年末から18年にかけては神奈川県立がんセンター(横浜市)で、放射線治療医5人が相次ぎ退職。放射線治療と、国が先進医療に位置づける重粒子線治療の継続が危ぶまれた。
地方独立行政法人「くらて病院」(福岡県鞍手町)では18年、内科医全6人が一斉に退職し、一時、入院患者や透析患者を他の医療機関に転院させるなどの対応をとった。当時の町長による権限を超えた病院人事への介入が背景にあった。
国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)では14年、小児集中治療室(PICU)の医師9人が一斉に退職し、病床数を減らして対応せざるを得ない事態に陥った。