元キャンディーズで女優の伊藤蘭さんが、解散から41年の時を経てソロデビューした。あたたかな雰囲気に満ちているが、実は焦っていてもそう見えないのだとか。
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その歌声は41年の時をタイムスリップしたかのように愛らしく、ぬくもりと艶をまとっていた。伊藤蘭さん(64)自身もまた向き合う相手を自然と微笑ませる、やわらかいオーラに満ちている。
「歌のお話は以前からいただいていたのですが、なかなかその思いに至らなかった。でも去年の春に『やってみようかな』と決心しました。年齢的にも声をかけていただける最後のチャンスだと思いましたし、エネルギーがあるうちに、と」
ボイストレーニングを強化したが、プレッシャーもあった。
「正直、何度も『やっぱり無謀じゃない?』と思いました(笑)。キャンディーズは最強の3人のコーラスでしたから、一人で歌うのは本当に心許なかった。若い頃より声の高さも音域も狭まっていますし。でもそんな“いまの自分”を受け入れながら、いまの私にできることをすべて表現したつもりです」
決心の理由には、家族もある。夫で俳優の水谷豊さん(66)は2作目の映画監督に挑戦、長女で俳優の趣里さん(28)は昨年の主演映画で数々の賞に輝いた。
「みんながそれぞれ活動しているのを見て『私も尻込みせずに何かやらないと』と触発されました。主人も完成したアルバムを『いいね』と言ってくれました。『曲調がバラエティーに富んでいるから、次はどういう曲だろう?と飽きずに聴けるね』って」
一度は「普通の女の子に戻りたい」と願い、約2年の休業を経て俳優として復帰。結婚・出産を経ても止まらずに、仕事に情熱を注いできた。
「やっぱり演じることが好きなんだと思います。次はどんな作品や人と出会えるんだろう──そんなワクワクの繰り返し。幸いプライベートにも時間をとれる環境をいただいていたので、仕事との両立が大変だとは思わなかった。ただ、娘には寂しい思いをさせていたかもしれません。本人に聞いたことはないですけど、俳優という仕事をしているだけで『お母さんが自分だけのものじゃない』と感じる瞬間もあったんじゃないかな」
趣里さんが俳優の道に進むと決めたときには、相談も受けた。