●世間の話題を集めやすく、反発を招きにくいツール

 最近では、東京や大阪に行くのは「イケてない」のだという。かつて20年以上、日本で勤務した元韓国財閥大手幹部は3月、自分のスマホの画面を私にかざした。そこには、日本各地の桜の名所の一覧が載っていた。この元幹部も「友人たちが、他の韓国人が知らない桜の名所を教えろって、うるさいんだよ」とうれしそうに語った。

 私の皮膚感覚でも、大多数の韓国人は日本人が大好きだ。今年3月1日、日本統治に反対して朝鮮半島各地で起きた独立運動は100周年を迎えた。この直前、知人(56)から連絡が来た。「娘が旅行で韓国に行くと言うんだが、行かせて大丈夫だろうか」。私は即座に「全く問題ない」と返答した。

 日本外務省は日本人旅行客らに安全への注意を喚起していたが、トラブルは全く起きなかった。

 それでは、日本のお茶の間でもよく紹介されている、「歴史認識を巡り、日本大使館前などで、日本を激しく非難する韓国人」という光景は、どうして生じてしまうのだろうか。

 1965年、日本は韓国と国交を正常化するにあたり、請求権協定を結んだ。「無償3億ドル、有償2億ドル、民間経済協力1億ドル以上」という経済協力には、徴用工問題などを含む様々な懸案を解決する意味が込められている。

 交渉に立ち会った町田貢・元駐韓公使(84)によれば、当時の日韓政府関係者の認識は、「竹島の領有権問題以外は全て解決した」というものだった。

 ただ、国交正常化後に、当時の当局者らが想定していなかった問題が三つ発生した。韓国人被爆者、サハリン残留韓国人、そして従軍慰安婦を巡る問題だった。

 日韓両政府は、「想定外の問題」として、この三つの問題に取り組んだ。

 双方は15年12月、最後まで残った慰安婦問題について、安倍晋三首相が謝罪し、日本政府の予算で慰安婦を救済する財団を設立した。問題は解決したはずだった。

 だが、18年11月、文在寅(ムンジェイン)政権は財団を解散する方針を発表した。なぜか。

 一つは、日韓両政府が主導したやり方が、韓国市民団体の「自分たちをないがしろにした」という不満を呼び起こしたからだ。日韓両政府が合意後、慰安婦への慰問事業などのフォローアップに消極的だったことも、この市民団体の主張を正当化する材料になった。

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