「データサイエンス実践論」などの授業に、企業で活躍するデータサイエンティストを頻繁に呼べるのも、多くの企業と連携する同大ならでは。1期生で現在3年生の河地卓哉さん(20)は言う。
「1、2年の時からほぼ毎週、ビジネスの最前線でデータがどう使われているのかを聞くことができました。将来は、自分たちもこんなふうに活躍できるんだというイメージが湧くので、モチベーションも高まります」
企業にとっても、DSを専門に学ぶ学生は有望な人材として期待が大きい。インターンの特別枠を設ける企業も少なくない。河地さんも昨夏、大分にあるソニーグループの半導体工場で5日間のインターンを経験した。「ものすごく内容が濃かった」と満足している。
データサイエンティストには、データを加工・処理し、分析・解析する理系的なスキルと、それらを使って実際の課題解決に結びつけていく文系的な「ビジネス力」が必要とされる。
■文理融合型の学問
そのため、DS学部を置く3大学ともに「文理融合型のカリキュラム」を掲げるが、学び方に対する考え方は異なる。対照的なのは、横浜市立大と武蔵野大だ。前者は、理系的スキルを最初からがっちり積み上げることを狙う。後者は、「後から必要に応じて学べばいい」という立場だ。横浜市立大は入試でも数学の配点が高く、入学者の8割超が理系だ。滋賀大では理系が6割、武蔵野大では7割。
横浜市立大が数学の素養を重視するのは、「理系をベースに文系の知識を身につけるほうが、その逆よりスムーズ」との考えからだ。
「当大学では、よりレベルの高いデータサイエンティストを育てたいと考えています」
データサイエンス推進センター長の山中竹春教授はそう話す。
「データを処理・分析するツールを電子レンジに例えると、レンジを使えば誰でもある程度料理はできます。上位のデータサイエンティストは、どんな材料をどう切って混ぜるのかを一から考えられる人です」(山中教授)
一方、武蔵野大データサイエンス学部長の上林憲行(かみばやしのりゆき)教授は「従来の統計学をベースにしたデータサイエンティスト像を打破したい」と意気込む。
「学生には、『データサイエンティストになるには数学ができないとダメ』という思い込みで、諦めてほしくない。だから門戸を広くしています」(上林教授)
同大の入試では、数学なしで文系科目のみでの受験も可能だ。また、1年生の早い段階から、AIの活用に力を入れている。
「まずはツールを使って問題解決をする面白さを感じてほしい。理系的スキルを身につけるのは自分なりに解決したい課題を見つけてからでも遅くない。学び方自体も、アクティブラーニング型に転換しています」(同)
今回紹介した3大学のように「DS学部」を名乗らなくても、多くの大学でDSを学べるコースを新設する動きが目立つ。中央大学理工学部のように学科を超えて学べるクラスター制を採用する大学もある。来年以降もDS関連学部・学科は注目株だろう。(編集部・石臥薫子)
※AERA 2019年5月13日号より抜粋