■尿の変化にサインあり

 キャンペーンに参加している専門病院「Tokyo CatSpecialists」(東京都港区)の山本宗伸院長(32)に、腎臓病の予兆を知る手がかりを聞いた。

 まず押さえておくべきは、猫の腎臓病のサインは尿の変化に現れるという鉄則だ。

 尿の量が増えたり、色が薄くなったり、においが弱くなれば腎臓病の疑いがある。尿が出なくなるのは腎臓病の末期症状。手遅れになる前にどれだけ早期に異変に気づいてあげられるかは飼い主の責任といえる。

 ただ、尿の変化は少しずつ起きるので飼い主は気づきにくい。比較的、変化に気づきやすいのが水を飲む量だ。

「1日に体重×50cc以上の水を飲むようになったら即、受診すべきです」(山本院長)

 食欲不振や嘔吐の回数増加による体重減も腎臓病の疑いがある。脱水症状も要チェックだ。体毛や皮膚の色つやが劣化するほか、眼球が落ちぎみになり、目がくぼむのは脱水のサイン。口臭がひどく、歯も悪くなる。

■<療法食>初期の段階から悪化を抑える

 慢性腎臓病は症状の進行に応じ、ステージ1(初期)~4(末期)に分類されている。山本院長はこうアドバイスする。

「ステージ3以降でないと、腎臓病の症状はほとんど出ません。ステージ1、2の段階だと血液検査や尿検査をしないと気づくことができないので通常は年1回、12歳以上のシニア猫は年2回検診したほうがいいでしょう」

■薬よりも効果が大きい

 発症後はどう対応すればいいのか。現状では腎臓病の悪化を抑制する薬しかないことを踏まえ、山本院長は「療法食」の活用を勧める。

「薬よりも療法食のほうが進行予防効果は大きいといえます」(山本院長)

 それを裏づけるデータを、小動物の臨床栄養学に関するスペシャリストでペットフードの企画・開発会社「ヘリックス」の徳本一義社長( 46)が提示する。

 米国人獣医師のシェリー・ロス氏が2006年に発表した臨床結果によると、慢性腎臓病のステージ2~3の猫に療法食を与えた場合、24カ月の試験期間中に腎臓病が原因で死亡したケースはゼロだったという。

「現状の動物医療技術では、腎臓病の猫が寿命を延ばすのに最も効果的なのは、療法食の摂取であることは間違いありません」(徳本社長)

 腎臓病の食事管理は3段階に分かれるという。

 第1段階は健康な状態。第2段階は獣医師も確認できないレベルだが、腎臓に障害を受けているステージ1の「不顕性」の状態。第3段階は症状が悪化し、病院で慢性腎臓病の診断を受けたステージ2~4の状態だ。

 ポイントは「第2段階」の見極め。徳本社長は言う。

「高齢猫はほぼ確実に腎機能が低下することを踏まえれば、多くの高齢猫は不顕性の腎臓病といってよい状態です。このため、7歳を超えれば病院で腎臓病との診断を受けなくても、リンの配合を制限した高齢猫向けの総合栄養食を与えるのがベターでしょう」

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