若者含む無党派層から絶大な支持を得る、玉城デニー沖縄県知事がAERAに登場。掲げる公約は「誰一人取り残さない社会」。基地問題では修羅場も予想されるが、「タフな明るさ」で時代を動かす覚悟だ。
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「おおっゴジラだ!」
撮影場所の東京都世田谷区の「東宝スタジオ」に着くなり、「ゴジラ」のブロンズ像に駆け寄る。同行の秘書にスマートフォンを託し、自前の撮影会が始まった。
SNSでマメに近況を発信する。フェイスブックは写真付きで日常の断片を、ツイッターは政治に絡むコメントをピリッと。硬軟を使い分ける熟達ぶりだ。
政府と対峙する試練の日々が続く。「辺野古」を止めるため、あらゆる手を尽くす覚悟だが、心身の消耗は避けがたい。
「全力でぶち当たってばかりだともたない。気持ちの切り替えは得意なほうだと思っています」
スマホには料理、2歳と1歳の孫、実家で飼う猫の写真が満載されている。
「一番の癒やしは孫と遊ぶこと。あとはギターかな」
愛用のエレキギターは、いつでも弾けるよう知事公舎の部屋の一角に陣取る。今もギター兼ボーカルとして月に数回、バンド仲間で集まって練習する。
2002年の沖縄市議選に当選する前は、沖縄のテレビやラジオでパーソナリティーを務める人気タレントだった。
「エリートでもないし、那覇市出身でもない。私は異端の県知事です。でも、私の知事就任は沖縄本来の多様性を示す形になったと思います」
沖縄駐留の米海兵隊員だった父親の顔を知らずに育ち、貧困やいじめも経験した。「戦後沖縄」を体現する知事は、沖縄の多様性のシンボル的存在でもある。
「誰にもチャンスがあり、誰もが見守られている社会。それは、ウチナーンチュのチムグクル(肝心)を反映したやさしい社会です」
分断ではなく包摂を呼び掛ける、その姿に違和感は全くない。知事就任から半年。周囲からは「顔つきが変わった」とも。異彩を放つ知事から目が離せない。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2019年4月15日号