
東京証券取引所が、東証1部を頂点とする市場の再編を検討している。時価総額を基準に「東証プレミアム」「東証スタンダード」「東証エントリー」の3分類する案が有力で、多くの企業が最上位市場から脱落する。市場関係者は、飛び交う足切り情報に困惑している。
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昨年11月から、東証の有識者会議「市場構造の在り方等に関する懇談会」で議論が始まった。その中で、東証1部銘柄の過剰状態の解消策として一定の“足切りライン”を設定し、1部市場の選抜メンバーで構成される「プレミアム市場行き銘柄」と、中堅企業向けの「スタンダード市場行き銘柄」に分ける案が出された。
線引きの道具は時価総額。最低ラインとして500億円から1千億円の間をボーダーとする案が出たようだ。
プレミアム市場の当落線上にある企業は、増配や自社株買いなど株主への利益還元を強化することで株価上昇の努力を行い、時価総額を引き上げようとするだろう。時価総額は「株価×発行済み株式数」で算出されるため、プレミアム市場に入りたければ株価を上げることが有効策になるからだ。
「小規模な銘柄が多い地方銀行は、増配などの短期的な施策にとどまらず、近隣地銀との経営統合で基準達成を狙うことも考えられます」(大槻さん)
もし1千億円で選別すれば、プレミアム市場に移行できるのは2139もの1部銘柄のうち700ほど。ハードルを500億円まで下げても1050程度にとどまり、残り1千銘柄を超える企業は事実上の降格だ。プレミアム市場から脱落すると、当該企業の株式は大量に売られる可能性が高い。どれほど業績が良くて配当が高くても、機械的に大量の売りが出てくるのだ。その理由は何か。
東証は、1部上場の全銘柄の値動きを表す東証株価指数(TOPIX)を日々算出している。機関投資家は東証1部の全銘柄に投資することを「TOPIXを買う」と形容する。日銀が量的金融緩和政策で購入する上場投資信託(ETF)や、公的年金を扱う年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの年金マネーは日本株に投資する際、運用成果がTOPIXに連動するよう、東証1部全銘柄を保有している。