世界選手権を終えた羽生結弦選手が今季の演技と課題について語った。フリーでは世界初のコンビネーションジャンプを決め、自己最高得点を叩きだすも、悔しさが残る結果となった。ネーサン・チェン選手に敗れたことで、羽生選手の「勝利へのこだわり」がより強まったという。
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フリーの演技を終えると同時に握った右の拳。ただ、人さし指はギュッと手のひらにしまってあった。羽生結弦(24)が言う。
「勝てると思った時は、指を挙げるんです」
2017年3~4月にフィンランド・ヘルシンキであった世界選手権や、昨年2月の平昌五輪がそうだった。フリーを終えた瞬間、勝利を確信したように人さし指で力強く天を突き、実際に優勝してみせた。
だが、今回の拳には敗北の予感をにじませた。
「厳しいって思って。あー、勝てねーだろうなっていう感じ」
結果は、ショートプログラム(SP)、フリーともほぼ完璧な演技で、フリー、合計ともに世界最高得点を記録した米国のネーサン・チェン(19)に続く、銀メダル。
「頑張ったとは思います。でも、まだできる、まだやれる、もっと詰められる」
全力を尽くした充実感と悔しさの両方が、人さし指を立てない右手には表れていた。
届かなかった2年ぶり3度目の頂点。勝負をかけたフリーを読み解くには、この2日前、痛恨のショートを振り返っておかなければならない。
3月21日夜。大観衆の緊張感がため息と悲鳴に変わったのは、冒頭の4回転サルコージャンプだった。踏み切りが合わず2回転になり、規定によって無得点に。
「もう、いっぱいいっぱい。久しぶりに頭が真っ白になった」
失敗の理由は、演技直前の6分間練習にあった。満足にこのジャンプを跳べたのは、たったの1回。6選手が一斉にウォーミングアップに臨むため、タイミング良くジャンプできる空間を見つけることができなかった。
「ワタワタしちゃって。結局、自信がないまま行ってしまったのが原因」