こうした、国を分断するトランプのメッセージにあらがおうとするセレブたちの言動が目立ったのが、今年2月に開かれたグラミー、アカデミー両賞の授賞式だ。

 そのなかで特に印象に残ったのは、歌手レディー・ガガの言葉だった。

 テレビで生中継されていたアカデミー賞の授賞式が終わってから1時間余り。会場裏手の記者会見場で待っていた私たちの前に、ガガは最後に現れた。ガガは、「アリー/スター誕生」の主題歌「シャロウ」で歌曲賞を受賞していた。

 ガガはツイッターを通じて、トランプ批判をすることもある。この日はトランプへの直接的な非難は封印していたが、会見の末尾で強く訴えた。

「(私たちは)とてもシャロウ(浅薄)な時代のなかにいる。けれども、それは、みんなが手をとりあっていく好機でもある」

 ガガは主題歌のタイトルにひっかけ、こう語った。

 フェイクニュースが飛び交い、意見が異なる人々の間の交流が減り、表面的なつきあいにとどまる現状は米国だけではなく日本でも共通している。そんなときだからこそ、もっと深く交流し、混じり合っていこう。ガガのメッセージは、トランプに批判的なハリウッドの多くのセレブたちが社会全体に向けて発信する思いを象徴するものだった。(国際報道部・尾形聡彦)

AERA 2019年4月1日号より抜粋