マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
マキタスポーツ/1970年、山梨県生まれ。俳優、著述家、ミュージシャンなど多彩な顔を持つ。スポーツ用品店だった実家の屋号を芸名に。著書に『すべてのJ-POPはパクリである』『一億総ツッコミ時代』ほか。映画「苦役列車」でブルーリボン賞新人賞受賞。新刊に『越境芸人』(東京ニュース通信社)
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イラスト:大嶋奈都子
イラスト:大嶋奈都子

 お笑い芸人のマキタスポーツさんによる「AERA」の連載「おぢ産おぢ消」。俳優やミュージシャンなどマルチな才能を発揮するマキタスポーツさんが、“おじさん視点”で世の中の物事を語ります。

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「カメラを止めるな!」という映画が昨年大ヒットした。私は3度見た。1度目は噂が本物か確かめに行き、2度目は自分が本当に面白かったのか確かめに行って、3度目は長女を連れて行き、その長女を見ていた。さすがにストーリーは3度見たら飽きる。特にこの映画はストーリーを知っているのと知らないのとでは大変な違いがあり、一見するとそのぐらい映画全体のなかでストーリー依存度の高い映画ではある(映画はストーリーが全てではない)。しかし、3度とも私は感動出来た。それがなんだったのか考えたい。

 私は、日ごろから「面白いはなぜ発生するのか?」を考えている。そこから5W1Hよろしく「何に?」「どのように?」「いつ?」といった感じに考えを巡らせ、そしてそれを自分の仕事に生かしていく。問題なのは、プロな私はついうっかり、演者、作り手の技術論でこれを考えがちなところである。そうなる前に極力一歩引いて考えるようにしたいのが「受け手」の気持ちだ。受け手が面白いと感じるのは、「面倒臭く無く」「タイミング良く」「熱のあるもの」、あと「これは使える」が大きい。「カメラを止めるな!」はこれを全部満たしていたように思う。既に評判だったので選んだり探したりする“面倒”がなく、キラキラ映画ばかりでつまらないなーと思っている“タイミング”にハマったし、見た後に「これ見とかないと!」と自慢に“使え”た。でも、一番なのは「熱」だと思うのだ。「カメラを止めるな!」は演者、スタッフらの熱が凄かった。その熱意を見て感動したのだと思う。

 不毛な問いを一つ。私が、例えば宮藤官九郎氏ぐらいの評価のある脚本家だとして。彼ぐらいの地位があると大きい予算も組まれているだろう、キャスティングも自由に出来そうだし、演者もこぞってクドカン作品なら出たいと言うはず。この時点で「熱」は100度。

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