天国帰りの「むぎ(猫)」がいよいよメジャーデビューする。その名は「むぎ(猫)」。
肉球のない手で木琴を巧みに操り、歌って踊る。大人から子どもまで、聴く人の心を掴む理由は、とにかく「エモい」からだという。
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メジャーデビュー前だというのに、インストアライブの会場は満席。立ち見客がひしめくなか、登場したのは「猫」だ。はちわれに鼻の横の黒ぶちがチャームポイントで、名前を「むぎ(猫)」、天国から帰ってきた猫だという。
巧みに木琴を操り、歌って踊る。印象的なのは、楽曲の幅だ。子どもが口ずさみたくなる楽曲からパンクロック、レゲエ調まで、まるで猫が飛び跳ねるような楽しい歌が続く。木琴の音が猫の足音にも聞こえてくる。
むぎ(猫)って何者なの?
天国に行く前のむぎが野良猫の子として生まれたのは、1997年。乳離れしてすぐ、飼い主のゆうさくちゃんに引き取られた。当時、ゆうさくちゃんは音大の1年生。故郷の沖縄から上京し、ホームシックにかかっていたところだった。
ゆうさくちゃんといつも一緒に過ごした。木琴を練習する横でくつろぎ、寝る時は一緒。木琴の上を走り、ティッシュを全部引っ張り出すいたずらもした。ゆうさくちゃんの大学卒業後は、一緒に沖縄に帰り、その実家で暮らした。家族に愛され、楽しい時間が終わって、天国に行ったのは「12歳のとき」。
ゆうさくちゃんは大いに寂しがり、落ち込んだという。5年前、ゆうさくちゃんが新しい体をつくってくれ、「肉球と引き換えに」地上に戻ってきた。
新しい体の使い心地は?
「目も悪くなって、髭のレーダーもない。だけど歌って踊れて楽しい。最近、ピアノが弾けることもわかったんだ」<むぎ(猫)>
むぎ(猫)の音楽の原点は、1度目の“ニャン生”での経験だ。楽しかったことや思い出のなかに、胸を掴む何かがある。
<僕は一度死にました それは寒い日でした 君の声を聞きました 君の腕の中で むぎ寂しくなるよ>(「天国帰り」)