


在位30年を祝う式典で、平和への思いを語った天皇陛下。皇后とともに慰霊の旅を続け、国民の共感を集めた平成の時代がまもなく終わる。皇太子さまと雅子さまによる新時代の皇室は、どのような姿になるのか。コラムニストの矢部万紀子氏がつづる。
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2月24日に開かれた「天皇陛下在位30年記念式典」での「おことば」。その最終盤、陛下(85)は「平成が始まって間もなく、皇后は感慨のこもった一首の歌を記しています」と語り、美智子さま(84)の歌を披露した。
<ともどもに平(たひ)らけき代(よ)を築かむと諸人(もろひと)のことば国うちに充(み)つ>
この歌が詠まれた時、昭和天皇崩御という深い悲しみの中にあったので、その「ことば」は声高に語られたものではなかったと断り、こう続けた。
「しかしこの頃、全国各地より寄せられた『私たちも皇室と共に平和な日本をつくっていく』という静かな中にも決意に満ちた言葉を、私どもは今も大切に心にとどめています」
8分を超した「おことば」だったが、「私ども」という表現が使われたのはここだけだった。自分たちは心の中に、国民と「平和」を共有したことをとどめているのだ、と述べたのだ。平成という時代を締めくくるのに、実にふさわしいと感じた。
「忘れてはならない4つの日」は、今では宮内庁のホームページにも載っているが、陛下がその話をされたのは、まだ昭和の時代だった。
1981年8月7日に「まもなく終戦記念日ですが、どんな感慨を持たれますか」と質問され、皇太子さま(当時)はこう答えた。
「こういう戦争が二度とあってはいけないと強く感じます。そして、多くの犠牲者とその遺族のことを考えずにはいられません。日本では、どうしても記憶しなければならないことが四つあると思います。(終戦記念日と)昨日の広島の原爆、それから明後日の長崎の原爆の日、そして6月23日の沖縄の戦いの終結の日。この日には黙祷を捧げて、今のようなことを考えています」