話をサンバイオに戻そう。株式市場ではサンバイオ株の急落で大幅な損失を出す投資家が続出した。証券会社から資金を借りて株を買う信用取引では、元手の3倍相当の株式を買えるため、実際の値動きよりも大きく投資資金が増減する。
「サンバイオ株の価格帯別出来高(どの株価で買った人数が多いかわかる指標)を見ると、1万1千円台が突出して多い。たとえば1万1千円で最低単元の100株を信用取引で買っていた場合、2月5日の2401円で86万円の損失が発生します」(楽天証券シニアマーケットアナリストの土信田雅之さん)
サンバイオの株価データを分析すると、個人投資家の損失は最大58億円と推測される。
「創薬ベンチャー株は、通常の株の値動きと性質が異なります。任天堂がゲーム機のSWITCHを発売してクリスマス商戦でいくら売れた、利益はこれくらい出るだろうといった期待で株価が上がる構図ではありません。サンバイオは新薬が成功するまで利益も見えない。成長企業ですから発行済み株式数も少ない。そこに臨床試験不調という悪材料が重なれば暴落は避けられません。リスク管理が問われる銘柄です」(同)
株価が上がる材料は期待だけという現実を認識せず持ち続けていた矢先の損失。ただ、リスク管理といわれても素人には判断材料がなさすぎる。
「バイオ・創薬ベンチャーに投資する場合、チェックすべきポイントは、その会社の提携先です」(前出、いちよし経済研究所の山崎さん)
ビッグファーマと呼ばれる世界の巨大製薬メーカーとの提携件数が目安になるという。
「研究内容が専門的で理解しにくい場合も、ファイザー社やノバルティス社のようなビッグファーマに買ってもらえる技術があれば、製薬のプロが有望と判断したことがわかります」(同)
提携先企業が少ない会社は、商品化までたどり着かないリスクもあると認識しておきたい。
「投資という観点だけで見た場合、バイオ・創薬株は商品化まで付き合う必要はありません。試験の成功や承認申請などの節目で株価が上がれば売却し、利益を確定しても構わない」(同)