「来た来た、あのマキタがお出ましだよ!」
はやし立てる友人らに「はしゃぐんじゃないよ」とばかりにクールにキメる私。「やっぱり東京の人は着こなしが違うね~」なんて言われてほくそ笑む。借り物なのに。ひとしきり旧友たちと浮ついた話に興じた。皆、私を上に置いてくれる。
調子に乗った私は次々と旧友達をいじって回った。「なんだこのシード感は!」。みんな「本当の自分」を知らない。うまく騙せてる。
私は49歳になった。アラフィフ丸出しだ。私が世に出られるようになり始めたのは四十ぐらい。つまり、二十歳の頃から考えると、世に出るまでは20年もかかっているということ。プライドが高く、世間知らずで、意気地なし。しかも、自分が大層面白く、なんならカッコいいとも思っていた。だから頑張らなくても世間は自分に気づいちゃうだろうと。
20年かかったが、当時目指した場所には一応立てているとは思う。
読者のなかに二十歳あたりの年頃の人がいたら、この人生をどう思うだろうか。「へぇ」と一言、興味無さげに言ってほしい。二十歳の私ならそうしたはずだから。
※AERA 2019年2月4日号