「化粧品やベビー用品、マタニティー用品の問い合わせが特に多いです。同じアジア人だから肌質も合うし、日本製品はレベルが高いと感じます」
使用感や効用など、客からの問い合わせは細かい。信頼感に直結するため、尋ねられれば丁寧に対応する。
自然と、新商品や人気商品に詳しくなる。ソーシャルバイヤー側から商品情報をSNS上で発信することもあれば、顧客からの依頼で知る商品もある。ソーシャルバイヤー同士で、積極的に情報交換も行う。中国のオンライン人口は8億人を超えるとされ、情報を囲い込まなくても、顧客の取り合いにはならないからだ。
日本に比べ、ネット通販もはるかに浸透している。コンサルティング企業PwCによる2017年のインターネット調査によると、日本ではネット通販を「毎月利用する」人は46%、「毎週利用する」が15%、「毎日利用する」は4%に過ぎなかった。ところが、中国では「毎週利用する」が50%、「毎日利用する」も13%にのぼる。
中国には中国版アマゾンといえる「Tmall」という巨大ECサイトもある。そこでの日本製品の価格と、ソーシャルバイヤーを通じて買う価格はさほど変わらず、むしろ若干高い。なぜ、ソーシャルバイヤーを通じて買いたいのか?
「商品の口コミならSNSにありますが、日本に住んでいる私に『実際はどうなのか』と聞いてから買いたい人が多いようです」(Joyouさん)
森下さんはこう読み解く。
「中国人は宣伝が嫌いで、広告よりも口コミに信頼を置く。そこにSNSによる口コミ文化やソーシャルバイヤーがマッチしたということでしょう」
さらに、買う商品の志向も明確になった。
「日本製なら何でもいいのではなく、シートマスクでもお菓子でも『このメーカーのこの商品でなければ買わない』という指名買いが急増しました。自分用や友人へのお土産といったプチ買いが主流です」(森下さん)
(編集部・熊澤志保)
※AERA 2019年2月4日号より抜粋